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【成長ホルモン治療は“量”で差がつく?】 ──2つの臨床試験から読み解く、用量と身長の伸びの関係

「成長ホルモン治療は、量が多いほどよく伸びるの?」
「毎日注射していれば、投与量はあまり関係ないの?」

成長ホルモン治療を検討している保護者の方にとって、「投与量」はとても気になるポイントのひとつではないでしょうか。

結論から言うと、成長ホルモン治療の効果は、単に注射を続けているかどうかだけでなく、
投与量や治療を始めた時期、治療期間、骨年齢、思春期の進み方など、さまざまな要素によって変わります。

実際に、特発性低身長(ISS)などの子どもを対象とした臨床試験では、一定の用量範囲で、投与量によって身長の伸びや最終身長に違いがみられたことが報告されています。

ただし、これは「多ければ多いほどよい」という意味ではありません。

今回は、成長ホルモンの用量と最終身長の関係を検討した2つの臨床試験をもとに、
“投与量によってどのような違いがみられたのか”、
そして “実際の治療では何を考える必要があるのか” をわかりやすく解説します。

目次

【1. 今回紹介する2つの論文について】

今回参考にするのは、いずれも「成長ホルモンの用量と最終身長の関係」を検討した研究です。

◼️ 論文①:Witらの研究

1つ目は、Witらが2005年に発表した、特発性低身長の子どもを対象にした臨床試験です。
この研究では、成長ホルモン治療を次の3つの用量で比較しています。

▶︎ 低用量群:0.24 mg/kg/週

▶︎ 切り替え群:最初の1年は0.24 mg/kg/週、その後0.37 mg/kg/週

▶︎ 高用量群:0.37 mg/kg/週

対象は特発性低身長の子どもで、最終身長まで追跡できた50名について、最終的な身長への影響が評価されました。
治療期間は平均6.5年でした。

特発性低身長とは?

英語でIdiopathic Short Statureと呼ばれ、ISSと略されます。
簡単に言うと、明らかな病気や成長ホルモン異常などが見つからないにも関わらず、年齢や性別から見て身長が低い状態を指します。

詳しくは、以下の記事で解説しています。
▶︎ 【特発性低身長(ISS)とは?】

◼️ 論文②:Albertsson-Wiklandらの研究

2つ目は、Albertsson-Wiklandらが2008年に発表した、主に特発性低身長の子どもを対象とした長期試験です。
この研究では、成長ホルモン治療を次の3つの条件で比較しています。 

▶︎ 未治療群:成長ホルモンを使用しない群

▶︎ 低用量群:33μg/kg/日(約0.24 mg/kg/週)

▶︎ 高用量群:67μg/kg/日(約0.47 mg/kg/週)

治療期間は平均5.9年で、最終身長までの成長が評価されています。

どちらの研究も、成長ホルモン治療の効果を見るうえで、「量によってどの程度差が出るのか」を考える参考になります。

⚠️ ここでの「低用量」「高用量」は、それぞれの研究内で比較するための呼び方です。
また、実際の治療で使われる投与量は、お子さまの体格や成長段階、検査結果などをもとに個別に設計されます。

【2. 論文①:高用量群では最終身長に差が出た】

Witらの研究では、高用量群(0.37 mg/kg/週)の成長ホルモン治療を受けた子どもは、低用量群(0.24 mg/kg/週)の治療を受けた子どもと比べて、最初の2年間の身長の伸びが大きいという結果でした。

具体的には、高用量群では、治療開始前の平均身長速度が年間4.4cmであったのに対し、治療1年目には年間8.4cmとなりました。
一方、低用量群では、治療開始前の平均身長速度は年間4.2cmであったのに対し、治療1年目は年間7.5cmであり、
高用量群の方が身長速度の増加が 年間0.8cm 大きかったと報告されています。

さらに、最終身長まで確認できた子どもでは、高用量群は低用量群より、最終身長が平均で3.6cm高い結果でした。
また、治療開始時に予測されていた成人身長と、実際の最終身長との差を見ると、
▶︎ 低用量群(0.24 mg/kg/週):+5.4cm
▶︎ 高用量群(0.37 mg/kg/週):+7.2cm
と報告されています。

✍つまり、この研究では、“成長ホルモンの用量が高いほど、身長の伸びや最終身長に上積みが見られた”と考えられます。

【3. 論文②:別の臨床試験でも“用量依存性”が示された】

Albertsson-Wiklandらの研究でも、成長ホルモンの用量と身長の伸びには関係があることが示されています。

この研究では、低用量群(33 μg/kg/日、約0.24 mg/kg/週)と高用量群(67 μg/kg/日、約0.47 mg/kg/週)の2つの用量を、未治療群(成長ホルモンを使用しない群)と比較しています。

その結果、成長ホルモン治療を受けた子どもでは、未治療群より最終身長が高くなりました。
さらに、その中でも高用量群が効果も大きいという「用量反応関係」が、治療1年目だけでなく最終身長に至るまで維持されたと報告されています。

具体的には、成長ホルモン治療を受けた子ども全体で、約8cmの上積みがあったとされています。
ただし、治療による伸びの大きさには、“ほとんど上積みがない子ども”から、“大きく改善する子ども”まで差があったことも示されています。

✍つまり、一定の範囲では投与量が多い方がより大きな成長効果がみられた一方で、
“同じように治療しても、効果の大きさには個人差がある”ことがわかります。

【4. 「投与回数」だけでなく、“総投与量”が重要】

ここで大切なのは、成長ホルモン治療の効果は、単に「何回注射したか」だけで決まるものではないという点です。

Witらの研究では、投与量は「mg/kg/週」、つまり体重1kgあたり、1週間でどのくらい投与したかで示されています。
一方、Albertsson-Wiklandらの研究では「μg/kg/日」、つまり体重1kgあたり、1日でどのくらい投与したかで示されています。

表記は異なりますが、どちらも見ているのは、
“一定期間に、体格に応じてどれだけの成長ホルモンを投与したか”という点です。

そのため、成長ホルモン治療では、
✅ 決められた頻度で毎回投与しているか(毎日/週に一回など)
✅ 週あたり、または月あたりの総投与量がどの程度か
✅ 体重や成長段階に合った量になっているか
✅ 治療への反応を見ながら調整できているか
を総合的に考える必要があります。

当院でも、毎日投与を基本としながら、1か月あたりの総投与量や、お子さまの体格・成長段階・検査結果を踏まえて治療設計を行っています。

【5. ただし「多ければ多いほどよい」わけではない】

2つの研究から、成長ホルモン治療では、“投与量が身長の伸びに関係する可能性”が示されています。
しかし、だからといって、“量を増やせば増やすほどよい”というわけではありません。

まず、成長ホルモンの効き方には個人差があります。
同じ量を使っても、よく伸びる子もいれば、伸び方がゆるやかな子もいます。

Witらの研究でも、成長ホルモンの量は、最終身長の伸びに関係する要素とされていました。
一方で、それだけですべての子どもの結果を正確に予測できるわけではなく、治療への反応には個人差が残ることも示されています。

つまり、成長ホルモン治療では、
「この量を使えば必ずこれだけ伸びる」とは言い切れないということです。

また、安全性の確認も欠かせません。
Witらの研究では、低用量群と高用量群の間で、安全性に大きな差は見られませんでした。
平均の空腹時血糖やHbA1cも、治療中に大きく変化しなかったとされています。

ただし、成長ホルモンは体の成長や代謝に関わるホルモンです。
そのため、治療中は身長の伸びだけでなく、体重、IGF-1、血糖、甲状腺機能、骨年齢、思春期の進み方などを確認しながら、必要に応じて投与量を調整していくことが大切です。

6. まとめ大切なのは“多いか少ないか”ではなく、“その子に合った量か”

成長ホルモン治療では、投与量が身長の伸びに影響する可能性があります。
今回紹介した2つの臨床試験では、一定の範囲内で、投与量が高い群ほど身長の伸びや最終身長の改善が大きいという「用量反応関係」が示されました。

ただし、これは「成長ホルモンは多く使えば使うほど、身長が伸びる」という意味ではありません。
治療への反応には個人差があり、同じように治療を行っても、得られる効果は一人ひとり異なります。

実際の治療では、身長の伸びや治療への反応に加えて、
体格、骨年齢、思春期の進み方、治療期間、安全性などを総合的に確認しながら、治療方針を検討することが大切です。

大切なのは、“たくさん使うこと”ではなく、
“その子にとって適切な量を設計すること” です。

当院では、成長曲線や骨年齢、骨端線の状態、ホルモン値などを総合的に確認しながら、お子さま一人ひとりの成長状態を評価し、治療方針をご提案しています。

「うちの子の場合、どのくらいの量が合っているの?」
「今の治療量で十分なの?」

と気になる方は、ぜひ一度ご相談ください。
お子さまの成長の状態や治療への反応を確認しながら、最適な治療設計を一緒に考えていきましょう。

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[参考文献]

  • Albertsson-Wikland, K., Aronson, A. S., Gustafsson, J., Hagenäs, L., Ivarsson, S. A., Jonsson, B., Kriström, B., Marcus, C., Nilsson, K. O., Ritzén, E. M., Tuvemo, T., Westphal, O., & Aman, J. (2008). Dose-dependent effect of growth hormone on final height in children with short stature without growth hormone deficiency. The Journal of clinical endocrinology and metabolism93(11), 4342–4350. https://doi.org/10.1210/jc.2008-0707
  • Wit, J. M., Rekers-Mombarg, L. T., Cutler, G. B., Crowe, B., Beck, T. J., Roberts, K., Gill, A., Chaussain, J. L., Frisch, H., Yturriaga, R., & Attanasio, A. F. (2005). Growth hormone (GH) treatment to final height in children with idiopathic short stature: evidence for a dose effect. The Journal of pediatrics146(1), 45–53. https://doi.org/10.1016/j.jpeds.2004.08.055

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