PRP療法について聞いたことがある方も多いのではでしょうか。自身の血液から取り出した成長因子を痛みや損傷のある箇所に注入し、自己治癒力を高める最新の治療法です。
慢性的な関節痛やスポーツ外傷など、さまざまな症状に効果があり、近年の研究でも有効性が示されています。手術や薬剤投与が不要で安全性も高いことから、注目を集めている治療法です。
PRP療法とは?
PRP療法とは、自己治癒力を促進する役割を果たす血小板を用いた治療法の一種です。
血液から血小板を多く含むPRPを作成します。傷んだ部分にPRPを注射し、自己治癒力をサポートする治療法であり、欧米では頻繁におこなわれています。
PRP療法のメカニズムについて、詳しく解説しましょう。
PRP療法とは自身の血液を利用した再生医療
PRP療法とは、自身の血液中から取り出した血小板濃縮液を用いた再生医療です。PRP療法は、血液中の体細胞を用い、損傷箇所に必要なタンパク質を届ける治療法です。
PRPに含まれる成分は、組織治癒や炎症抑制に必要なタンパク質を豊富に含んでおり、注射によって体細胞からタンパク質が放出されます。
放出されたタンパク質が血液中に含まれるタンパク質とともに働き、異常な炎症による痛みの緩和や組織修復に役立つことが、PRP療法の大きな魅力の一つです。
PRP療法は、血液を特殊な機械で分離し、PRPを抽出します。血液中には赤血球や白血球、血小板などが含まれていますが、濃縮させた血小板を患部に注入し、細胞の再生や治癒を促すことが可能です。
PRP療法は、スポーツ選手やアスリートの怪我の治療に使われる場合が多いものの、近年では美容目的での用いられることも増えています。
PRP療法の効果
PRP療法の効果については、さまざまな分野で研究が進められており、細胞の再生や治癒を促進する効果があります。
血小板濃縮液には、細胞を再生させる成長因子が含まれているため、治癒力の向上が期待できるでしょう。近年では怪我の治療のみならず、不妊治療や美容目的でも用いられています。
具体的な治療について、次のとおり解説します。
変形性膝関節症の痛み軽減
PRP療法は、変形性膝関節症の痛みを軽減する治療法として用いられます。
変形性膝関節症は、年齢や過剰な負荷などによって膝関節の軟骨がすり減り、痛みや運動制限を引き起こす疾患です。一般的な治療法には薬物療法やリハビリ、手術などがあるものの、PRP療法も注目されています。
PRP療法では、自身の血液から血小板を濃縮した液体を関節内に注射します。血小板濃縮液には、成長因子や細胞増殖因子が豊富に含まれており、関節の再生や修復を促進し、関節の機能や歩行能力の向上も期待できます。
しかし、効果には個人差があり、完全に痛みが消えるわけではありません。また効果の持続性も異なるため、定期的な施術が必要になる場合もあります。
スポーツ外傷の治療
PRP療法は、スポーツ外傷の治療にも有効とされています。
スポーツ外傷は、運動によって引き起こされる怪我や損傷のことを指し、スポーツ選手のみでなく、一般の方々にも起こり得るものです。
PRP療法では、血液から抽出した血小板濃縮液を損傷した箇所に注射します。血小板濃縮液には、さまざまな成長因子や細胞増殖因子が含まれており、細胞の修復や再生を促進する働きがあります。
スポーツ外傷による損傷部位にPRP療法をおこなうことで、損傷した細胞や組織の修復を促進し、治癒力を高められる仕組みです。具体的には腱の炎症や断裂、靭帯の損傷、筋肉の痛みや損傷などに対して有効です。
実際にスポーツ選手の中には、PRP療法を実施したことで怪我を早期に治癒し、復帰までの期間を短縮できた例もあります。また手術を回避できる場合もあり、より早期にスポーツ活動を再開できる可能性があるとされています。
顔全体の美容効果
PRP療法は、顔全体の美容効果も期待できる治療法の一つです。
自身の血液から抽出した血小板濃縮液を顔全体に注入し、肌の質感を改善や若返り効果をもたらすことが可能です。
血小板濃縮液には、コラーゲンやエラスチンの生成を促進する成長因子が豊富に含まれています。成長因子は、皮膚細胞の新陳代謝を活性化させ、肌のハリや弾力性を改善する効果があります。
また血管新生を促進することで、血行を改善し、肌の色艶の改善も可能です。顔全体にPRP療法をおこなうことで、小じわの改善、シミやくすみの軽減、ニキビ跡の改善などの美容効果が期待できるでしょう。
またPRP療法は自身の血液を使用するため、施術後のダウンタイムも短い傾向にあります。
ただし効果には個人差があり、状況によっては別の治療法が必要な場合もあります。適切な治療法を選択するためには、クリニックのカウンセリングで医師と相談しましょう。
不妊治療
近年、PRP療法が不妊治療にも有効であることが判明しました。
自身の血液から抽出した血小板濃縮液を、子宮内に注入することで、卵巣機能の改善や受精卵の着床率の向上など、不妊治療でさまざまな効果が期待できます。
PRP療法が不妊治療に有効な理由として、血小板濃縮液に含まれる成長因子が卵巣機能を活性化させることが挙げられます。子宮内膜の厚みや質の改善は、着床率の向上に有効です。
PRP療法の不妊治療においては、体外受精(IVF)や顕微授精(ICSI)などの治療と併用されることが大半です。
PRP療法を受けたあと、受精卵を子宮内に移植をおこなった場合、妊娠率が向上する可能性が高くなります。
ただし、PRP療法がすべての不妊症に対して有効であるわけではありません。不妊症の原因や個人差によって、PRP療法が適している場合とそうでない場合があります。
適切な治療法を選択するためには、不妊治療をおこなう医師への相談が必要です。
PRP療法のメリット
PRP療法には、多くのメリットがあります。
自身の血液を治療に使用するため、アレルギー反応や感染症のリスクも低く、入院や手術の必要がないなど、PRP療法は画期的な治療法といえるでしょう。
具体的なメリットについては、次のとおりです。
副作用が少ない
PRP療法の大きなメリットとして、副作用が少ないことが挙げられます。治療に使う材料が自身の血液であり、体内に異物を投与する必要がないため、アレルギー反応や感染症のリスクが低い傾向にあります。
また血液は常に体内で循環しているため、感染症のリスクも不要です。そのため、PRP療法は副作用が少ない点で、安全な治療法といえます。
日帰りでの処置が可能
PRP療法では、日帰りでの処置が可能です。治療に必要な時間が短く、入院や長期のリハビリは必要ありません。
PRP療法は治療に使う血液を採取し、濃縮した血小板を再注入して施術します。
基本的に治療時間は数十分から1時間程度で済み、患部の安静や運動制限が必要になる場合もあるものの、入院や長期のリハビリは不要です。そのため通院しやすく、治療後の日常生活に支障をきたすことも少ないでしょう。
また入院が必要な場合に比べて費用も抑えられるため、治療費の負担を軽減することが可能です。
手術と比べて傷跡が残りにくい
PRP療法は、非侵襲的な治療方法であるため、手術と比較すると傷跡が残りにくい治療法です。PRP療法は血液を採取し血小板を濃縮したあと、再注入して施術するため、手術と比べて大きな傷跡が残ることはありません。
手術では傷口を切開するため、傷跡が残ることが一般的です。
しかしPRP療法では切開する必要がなく、皮膚に残る傷跡が非常に小さい、または残らないこともあります。そのため、PRP療法は美容整形にも使用が可能です。
たとえば顔のしわやたるみを改善するPRP治療では、皮膚に注入するのみで手術を必要としないため、傷跡が残る心配がありません。
何度でも治療を受けることが可能
PRP療法には、何度でも治療を受けることが可能というメリットもあります。
自身の血液を用いた治療法であり、体内に留まる時間が短く、繰り返し治療をおこなうことが可能なためです。通常の治療法では、手術や投薬など、一度の施術で最大限の効果を得ようとします。
しかしPRP療法では、一度の治療で完全な治癒ができなかった場合でも、何度でも治療を受けることが可能です。
繰り返し治療をおこなうことで、持続的な効果を得られます。たとえば慢性的なスポーツ外傷に対してPRP療法を実施した場合、初回治療で効果を実感できたとしても、症状が再発するケースがあります。
PRP療法は、繰り返し治療をおこなうことが可能なため、再発した症状に対しても効果が期待できるでしょう。
治療可能年齢の上限制限がない
PRP療法には、治療可能年齢の上限制限がありません。一部の治療法には年齢制限があるため、高齢の方々は受けられない場合が大半です。
しかしPRP療法は、年齢や健康状態に関係なく、誰でも受けることが可能です。とくに高齢者や若年層、あるいは妊娠中や授乳中の女性など、他の治療法が制限される方にとって大きなメリットといえます。
PRP療法は自身の血液から作られるため、安全性に問題はありません。そのため医師による適切な指示に従えば、年齢や健康状態に関係なく、誰でも治療を受けることが可能です。
またPRP療法は、ほかの治療法と併用しても問題ありません。痛みや不快感を和らげるために、より多くの治療法を選択できるようになります。
PRP療法のデメリット
PRP療法にも、デメリットはあります。保険適用外の治療であることや効果には個人差があることなど、気になることがあるでしょう。
具体的なデメリットについて、詳細を解説します。
効果に個人差がある
PRP療法は、自身の血液から作られた治療液を用いるため、効果には個人差があります。なぜならPRPの効果は、年齢や健康状態、PRPの抽出方法、注射する場所や回数など、さまざまな要因によって影響を受けるためです。
具体的には年齢が上がるほどPRPの効果は低下し、糖尿病や肝臓疾患、白血病などの病気を持っている場合は、PRPが効きにくい傾向があります。
またPRPの抽出方法によっても効果が変わり、クリニックや医師によって方法が異なる場合があります。
PRP療法は保険適用外なため治療費が高い
PRP療法は国内ではまだ新しい治療のため、保険適用外の自由診療に該当します。そのため、治療費は高くなります。一般的にPRP療法の治療費は、数万円から数十万円程度です。
また治療回数や症状の重症度によっても治療費は変わります。
しかし、PRP療法は入院やリハビリが不要であるため、ほかの治療法と比べて総合的に費用を抑えられる可能性があります。
処置部分に腫れや痛みがある
PRP療法は、処置部分に腫れや痛みが生じる可能性があります。とはいうものの症状は比較的軽度で、数日~数週間で治まる場合が大半です。
症状が長引く場合は、医師に相談して適切な処置を受ける必要があります。処置部分の痛みや腫れが気になる場合は、処置後の注意点をきちんと守り、安静に過ごすことが大切です。
一部疾患や治療中の病気がある場合は施術できない
PRP療法は自身の血液から取り出した成分を用いて治療をおこなうため、一部疾患や治療中の病気がある場合には、施術できない可能性があります。
たとえば、血液が固まりやすい状態の場合にはPRPの生成が困難なため、凝固障害のある方はPRP療法の施術は適していません。
また血液感染症や免疫系の疾患がある場合には、PRP療法が病気の進行を促進する可能性があるため、治療できない場合があります。これらの疾患がない場合でも、施術前に医師の診察や検査を受け、治療が可能なのかを確認する必要があります。
PRP療法は疾患や治療中の病気がある場合には施術できないことがあるため、医師の診察や検査を受け、治療が適切なのか確認することが重要です。
PRP療法の治療の流れ
PRP療法は、短時間で症状の緩和が可能です。治療の流れについて、5ステップで解説します。
1:問診・診察
事前に問診や診察、採血検査、画像診断などを受け、PRP療法の適応を確認する必要があります。そのうえで医師から治療について説明を受け、施術に同意をします。
2:採血
通常の採血と同じように腕から血液を採取します。採取する血液量は、約10~50mlが一般的です。
3:PRPの抽出を待つ
採取した血液を遠心分離装置にかけ、血液中の成分を分離します。遠心分離によって血液中の赤血球や白血球などの成分を除去し、血小板濃縮液を抽出します。
4:抽出されたPRPを患部に注入
PRPを患部に注入します。通常は細い針を使用し、直接患部に注入します。
注入量や回数は、症状や状態によって異なるものの、多くの場合は1回の注入に対して数十分程度で終了します。
5:術後の経過観察
施術から1週間ほど経過したあと、患部の状態を診察します。一般的にPRP療法実施から半年間は、1か月ごとの経過観察が必要です。
しかし医師の判断によって、経過観察期間を短縮する場合もあります。定期的な診察をおこなうことで、治療の効果を確認できます。
PRP療法以外の再生医療法の種類と違い
PRP療法は自身の血液を用いて治療する再生医療法の一種です。
PRP療法以外にも再生医療法はいくつか存在するものの、PRP療法とは異なる点があります。
APS療法
APS療法とは自己血小板血漿製剤を用いた治療法の一つで、PRP療法の一種として位置づけられます。
APS療法はPRPからさらに抗炎症成分を抽出するため、より高濃度の成長因子を得ることが可能です。そのため、PRP療法よりも高い治療効果が期待できます。
APS療法は治療対象となる疾患が多岐にわたることから、美容外科や整形外科、歯科などの多くの分野で使用されています。APS療法もPRP療法と同様に保険適用外の治療であり、治療費が高額になることもあります。
PRP-FD療法
PRP-FD療法は、PRP療法と同じく自身の血液から抽出された成分を用いて施術をおこないます。
PRPから成長因子のみを抽出して凍結乾燥することで、PRP治療の2倍以上の自己治癒力を高められる点がPRP-FD療法の特徴です。PRP療法よりも鎮痛作用や炎症抑制作用、組織修復作用が高い傾向にあります。
PRP-FD療法は血小板に含まれる成長因子のみを抽出し、無細胞化したうえで冷凍乾燥加工するため、作製には日数が必要です。
PRP療法では採血当日にPRP作製から注入までおこなわれるのに対し、PRP-FD療法では施術完了まで時間を要する点が大きく異なります。
PRP療法に関するよくある質問?
PRP療法にメリットは多くあるものの、最新の治療法で保険適用外であること、効果や副作用などについて気になる点もあるでしょう。
PRP療法に関するよくある質問について一つずつ解説します。
PRP療法に副作用はある?
PRP療法を受ける際に、副作用について知ることは重要です。一般的にPRP療法による副作用は、非常に少ないとされています。
PRP療法では、自身の血液から抽出された血小板が用いられます。そのため化学的な物質や合成物質の使用が不要で、アレルギー反応や感染症のリスクが少ない治療法です。
また血液を抽出する際に使用する針による痛みや、注射による軽度の痛みが報告されることもありますが、一時的なものであり大きな問題にはなりません。
しかし、治療には個人差があります。とくに、PRP療法は患部に直接注入するため、治療部位によっては一時的な腫れや痛みが発生する場合があります。
そのため専門医による十分なカウンセリングや治療後の経過観察など、必要に応じた処置が必要です。
PRP療法にかかる費用はどのくらい?
PRP療法の費用は、クリニックや治療内容、治療部位などによって異なります。
1回あたり数万円から10万円程度が費用相場ですが、場合によってはそれ以上の費用がかかることもあります。PRP療法は保険適用外の自由診療となるため、全額自己負担です。
また保険が適用される治療法とPRP療法を組み合わせることで、より効果的な治療が可能となることもあります。治療内容や費用については、事前にきちんと確認しましょう。
治療後は通常通り活動しても大丈夫?
PRP療法での治療後、通常の活動に戻ることは可能です。
ただし軽度の腫れや痛みがある場合があります。そのため激しい運動や入浴は、控えることが推奨されています。
また必要であれば医師の指示に従い、適切なリハビリやケアをおこなうことも大切です。治療後に症状が改善した場合でも、完全に回復するまでには時間がかかることがあります。焦らずにゆっくりと回復を図りましょう。
どのくらい効果が持続する?
PRP療法の効果の持続期間は、症状の程度によって異なります。PRP療法は数週間から数か月の間、持続的に改善が見られることが一般的です。
しかし、完全に治癒するまでには、より長期的な経過観察が必要になる場合があります。
またPRP療法の効果の持続期間は、治療部位や使用されたPRPの濃度、施術の回数など多くの要因に影響されます。医師の指示に従い、必要なケアやリハビリを受けることで、より長期的に効果を維持することが可能になるでしょう。
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まとめ
PRP療法とは自身の血小板を濃縮し、その血小板に含まれる成長因子を注射する再生医療の一つです。抽出したPRPには痛みや炎症を抑え、組織修復を促進する効果があり、スポーツ選手から高齢の方の治療に広く用いられています。
PRP療法の大きな特徴は、薬剤や手術に頼らない自己治癒力を高める治療法であり、副作用が少ないことです。
ただし症状の改善には個人差があり、疾患の進行度合いによっては完治できない場合もあります。
またPRP療法のなかには、高濃度のPRPを用いるAPS療法やPRP-FD療法があり、医師の指示に従い適切な治療の選択が重要です。
PRP療法は、老若男女問わず自身の身体の治癒力を引き出し、早期治癒や痛みの軽減を実現する画期的な治療です。自身の身体の力を信じて、PRP療法で健康的で快適な生活を取り戻しましょう。
※本記事の情報は2023年4月時点のものです。
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