PRP療法は、関節の痛みや加齢による肌悩みに対する治療として用いられる方法です。血液を採取し、血小板を抽出した製剤を注射する方法で、関節の痛みの緩和や肌悩みの解消する効果が期待できます。
しかしPRP療法を受けたことがない方は、実際にどのような効果を得られるのか、失敗するリスクは高いのかなどの不安を抱くこともあるでしょう。
本記事ではPRP療法の主な効果や、失敗例、失敗を防ぐ方法を紹介します。
PRP療法とは
PRPはPlatelet Rich Plasmaの頭文字を取って略したものであり、血小板を多く含む血漿層(けっしょうそう)のことを指します。
血小板は、人間の体が細胞を修復するときに作用する成分です。たとえば皮膚の表面を傷つけた際、血小板が血液を止める働きをするため、時間が経つと血液は止まります。
さらに血小板が成長因子を生成すると、傷がふさがったあと皮膚は元の状態に戻ります。すなわちPRP療法は、血小板や成長因子の治癒力を活用する方法です。
ここからはPRP療法の主な効果から紹介します。
膝などの関節の痛みを抑制できる
PRP療法は、変形性膝関節症などの膝やひじといった関節の痛みへの治療に活用されています。
膝関節に血小板や成長因子の治癒力を活用するPRP療法を行うことで、関節の痛みの抑制、緩和などの効果が期待できます。また、大掛かりな手術や入院が必要なく、副作用も少ないため、スポーツ外傷の治療にもPRP療法が多く利用されています。
肌に弾力やハリを出す
PRP療法では血小板が肌の奥に浸透し、エラスチンやコラーゲン、細胞が作られるため、肌の内部から弾力やハリを出せることがメリットです。
さらに肌の弾力やハリは少しずつ効果が現れ、急に見た目が変わることはなく、周囲にPRP療法の治療を受けたことを気づかれる確率も低いでしょう。
PRP療法は肌細胞が徐々に再生され、施術を受けてから1~3か月で効果を実感できます。効果には個人差があるものの、一度のPRP療法で効果を得られるケースが多く、数か月に一度再施術を受けると効果が持続します。
小じわやシワの改善
PRP療法は、目の周辺や眉間のシワを薄くする効果が期待できます。
肌本来の弾力を出し、内側からハリが出るため、皮膚が押し上げられてシワが薄くなる仕組みです。小じわや深いシワも目立たなくなり、メイクのりをよくする効果が期待できます。
PRP療法を受けるのみではなく、小じわやシワの原因になる乾燥や紫外線を日常的に防ぎ、保湿ケアをしましょう。
ニキビ跡の凹みを改善
PRP療法は血小板の濃度が高く、損傷した細胞を活性化できる治療です。
色素沈着や赤みによるニキビ跡のほか、凹凸ができたニキビ跡にも効果が期待できます。とくにニキビ跡で肌に凹みができている場合、ニキビの炎症で皮膚の組織が壊れた状態であり、自然治癒は難しいでしょう。
しかし、PRP療法は血小板の作用により損傷した組織を再生できるため、ニキビ跡を薄くする効果が期待できます。
目の下のたるみやクマの改善
PRP療法は、目の下にできた黒いクマやたるみの解消にも効果が期待できます。黒いクマは、目の周辺にある筋肉量が減り、目の下にある脂肪がたるむことで影ができた状態です。
PRP療法は肌の内部にコラーゲンを生成し、肌を引き締める効果が期待できます。そのため、たるみを引き上げ、黒いクマの解消につながります。
PRP療法の具体的な失敗例
PRP療法は副作用のリスクが低いことから、クリニックでのさまざまな治療に用いられています。
しかし、PRP療法をはじめ100%成功する治療は存在しません。PRP療法の効果を実感できるのかは個人差があるうえに、副作用が出るリスクや失敗をする可能性もある点を理解しましょう。
次に、PRP療法で起こる失敗例を3つ紹介します。
術後に感染症が発症
PRP療法を受けたあと、患部から感染症を引き起こす失敗例もあります。PRP療法は、血液中の血小板へ成長因子を加えた薬剤を注入します。
感染症やアレルギーを発症するリスクは低い施術ですが、血液を採取したあとの血小板を抽出する過程や、成長因子を加える過程で細菌が入り、感染症を起こす可能性も0%ではありません。
PRP療法の施術を受けたあとに患部の腫れや赤み、肌が大きく膨らむなどの異常が出た場合には、感染症やアレルギー反応を起こしていると考えられます。
感染症は、PRP療法を受けた患部のみではなく全身に悪影響を及ぼすため、早めにクリニックを受診しましょう。
効果が出なかった
PRP療法は患者自身の血液を採取し、血小板を抽出、患部へ注入する再生医療です。そのため、PRP療法で得られる効果は、血小板の質によって異なります。
PRP療法を受けた方全員が同じ効果を得られることはなく、効果を実感できず失敗するケースも珍しくありません。
とはいうものの、1回のPRP療法で効果を実感できる方や、2~3回程度受けることで高い効果を実感できる方も存在します。そのため1回のPRP療法を受けたのみで効果がないと判断せず、医師に相談したうえで、数回治療を受けることも検討しましょう。
また肌や体の悩みによっては、PRP療法では効果を得られず、ほかの美容医療を受けた方がよい場合もあります。たとえばシワを消したい場合、ヒアルロン酸注入やボトックス注射がおすすめです。PRP療法は即効性がなく、少しずつ効果が表れます。
PRP療法を打つとすぐにシワが消えるものとイメージしていると、治療の効果がないと感じるでしょう。
しこりが取れなかった
成長因子が含まれるPRP療法は、濃度や患部に注入する量を適切に調整しなければ、治療を受けた部位が膨らみ、しこりが取れなくなるリスクがあります。
PRP療法を受けた部位は、内部の細胞が刺激され、ヒアルロン酸やコラーゲンが生成されて、内側から肌を押し上げたり関節の動きを滑らかにしたりなどの効果が期待できます。
しかし、内側から肌を押し上げる効果がどのくらい出るのかは予想できません。想定以上に効果が出ると患部が膨らみ、しこりになる可能性があります。
またPRP療法の効果には個人差があり、濃度や注入量を誤らなくても患部が膨らんだり、しこりができたりなどの失敗につながるケースは珍しくありません。
PRP療法で失敗した際の修正方法
PRP療法を受けて、効果が不十分な場合や失敗した場合でも、修正が可能なケースがあります。
PRP療法で失敗した際の主な対処法、修正方法を2つ紹介します。
ケナコルト注射を打つ
PRP療法を受けたあとの患部の膨らみや、しこりなどの症状が現れた場合は、ステロイドのケナコルト注射を打ちます。
ケナコルト注射は、しこりが小さくなるほか、アレルギー症状や内部の炎症緩和、免疫の抑制、細胞を収縮する効果などが期待できます。
ケナコルト注射を打った場所は、約3週間かけて少しずつステロイドが溶け出し、体内に吸収されます。
ステロイドにはいくつかの種類がありますが、ケナコルト注射はしこりや膨らみができた場所に打つと、数日間効果が続くことが特徴です。ケナコルト注射で失敗の修正をする場合は、1か月に一度の注射を約6か月継続しなければなりません。
しかしケナコルト注射には副作用があり、糖尿病や消化性潰瘍、誘発感染症、精神障害などが起こることがあります。
ケナコルト注射を継続して打ち、急に中止すると頭痛や発熱、筋肉痛、食欲不振、ショック症状などを起こす可能性もあるため注意が必要です。
ケナコルト注射は約6か月間、徐々に打つ量を減らす必要があります。自己判断でケナコルト注射を中止せずに、医師の指示通りに通院しましょう。
再施術を受ける
PRP療法のなかには、成長因子を添加しない施術方法もあります。
成長因子を添加せずにPRP療法を受け、効果が出ず失敗した場合は、再施術を受ける方法も効果的です。成長因子を添加してPRP療法の再施術を受けると、効果を実感できるケースがあります。
またPRP療法の効果を得るためには、血小板の濃度を見極めることや、血小板の質がよいことが重要です。
クリニックのなかにはPRP療法で失敗した際の再施術を保証しており、無償で施術を受けられるところもあります。PRP療法で失敗するリスクもあるため、カウンセリングの際に保証内容の確認が大切です。
PRP療法を受ける際の注意点
PRP療法は、妊娠中や特定の疾患で既往歴がある方は受けられません。
また医師やクリニック選びを誤ると、PRP療法の効果を得られず失敗する可能性があります。そこで、PRP療法を受ける際や、治療後の生活習慣に関する注意点を紹介します。
妊娠中・悪性腫瘍の既往歴があると治療を受けられない場合がある
PRP療法は再生医療であり、妊娠中の方は受けられません。妊娠中でも再生医療そのものが体に大きな影響を及ぼすことはないものの、風邪薬の服用、歯科治療など再生医療と呼ばれる治療は、精神的な負担が大きいと考えられています。
そのため多くのクリニックでは、PRP療法をはじめとした再生医療は妊娠中に受けられません。
また悪性腫瘍や脳梗塞、心臓病の既往歴がある方や、血液が固まりにくい薬剤を服用している方は、PRP療法を受けられない場合があります。
PRP療法は専門性・技術力の高い医師やクリニックを選ぶ
PRP療法では、患者の年齢や症状に合わせて、注入する部位や注入量を判断しなければなりません。
PRP療法の経験が少ない医師は、実績を作るために安い料金でPRP療法の施術を実施しているケースがあります。医師の経験不足により失敗する可能性が高く、濃度を誤りしこりが残るリスクもあるため注意しましょう。
PRP療法の実績があり、専門的な治療を実施しているクリニックで施術を受けましょう。クリニックの公式サイトで専門性や医師の技術力を確認するほか、SNSでPRP療法を受けた方の口コミを参考にする方法も有効です。
治療後にはリハビリテーションが必須
関節の怪我や痛みの治療でPRP療法を受ける場合は、施術後1~2週間リハビリテーションを実施します。
PRP療法を受けたあと、自然治癒力を高めて自己再生を促進する必要があるため、PRP療法を受けた直後は運動できません。リハビリテーションをする期間は、PRP療法を注入した部位は動かさず、サポーターを巻いて保護しましょう。
血流が良くなる活動をおこなうと痛みが強くなる可能性がある
PRP療法を受けたあとは、アルコールの摂取やサウナに入るなどの血流を促進する行為は控え、施術当日は短時間のシャワーで入浴を済ませましょう。
血行が促進されると、痛みや内出血、腫れが起こることがあります。患部に内出血や腫れが起こると悪化しやすく、治るまでに時間がかかる場合があります。
PRP療法を注入した部位の痛みが強く出た場合でも、治療に失敗したわけではなく、得られる効果は変わりません。
顔にPRP療法を受けた場合は当日から洗顔可能ですが、力を入れて洗うと注入した部分から雑菌が入り、感染症を起こすリスクがあります。
PRP療法後のセルフケアで肌トラブルを起こさないように、看護師や施術を担当した医師からアフターケアについて丁寧に説明をしてもらいましょう。アフターケアの説明を受けることで、セルフケアによる肌トラブルや失敗を避けることにつながります。
PRP療法で失敗しないクリニックの選び方
PRP療法を受けるクリニックは、料金の安さや自宅や職場からの通いやすさのみではなく、症例数やフォロー体制なども確認しましょう。
PRP療法を受けるクリニックを選ぶ際に、チェックすべき4つのポイントを紹介します。
PRP療法についての専門的な技術・豊富な症例数がある
PRP療法の技術や知識が豊富なクリニックでは、患者に適したPRP療法の濃度や注入量を調整できるため、失敗を防げます。また、万が一PRP療法を受けたあとにトラブルが起きても、知識や経験があると迅速に対応できるでしょう。
公式サイトで医師のプロフィールや症例をチェックし、自身の悩みに適した施術実績があるクリニックを選ぶことが大切です。
術後のフォロー体制が整っている
PRP療法は再生医療であり、自身が持つ治癒力を活用します。
薬剤やメスを使用する施術とは異なり、短時間で大きな変化が起こることはなく、一定期間の経過観察が必要です。PRP療法のフォロー体制が整っていないクリニックは、術後にトラブルが起こった場合や不安な症状が出た際に対応してもらえません。
生活するうえでの注意点やアドバイス、施術によってはリハビリテーションの方法も提案するなど、フォロー体制が整っているクリニックを選びましょう。またクリニックのフォローが無料なのかも、あらかじめ確認することが大切です。
患者一人一人に合わせた細かい調整を行っている
PRP療法は注入量や濃度、注入する深さ、注射針の種類、成分比などを一人一人の症状や希望に合わせて調整します。また肌の厚みや年齢、シワ、ニキビ跡の治療では、肌の凹み具合に合わせて調整しなければなりません。
そのため、すべての方に同じ施術をするのではなく、一人一人の悩みに対してオーダーメイドで治療をおこなうクリニックを選びましょう。
料金設定が明確か
PRP療法は保険が適用されない治療で全額自己負担のため、クリニックごとに料金が異なります。
PRPを生成するキットは数種類あり、キットによって料金や性能が異なるほか、医師の技術力に合わせて料金が設定されている場合が大半です。
施術プランやPRPの注入量に対する料金、別途麻酔代など、公式サイトにわかりやすく記載しているところを選びましょう。なおPRP療法は、ほかの再生医療と比較して料金が高い傾向にあります。
PRP療法と似ている治療にヒアルロン酸注入が挙げられます。ヒアルロン酸注入の方が費用を抑えて受けられるクリニックが多いものの、PRP療法は効果の持続期間が長く、コストパフォーマンスがよい点がメリットです。
個人差がありますが、PRP療法の効果が5年以上持続しているケースもあります。効果の持続時間も考慮しつつ、PRP療法の料金が予算内に収まるのかも確認しましょう。
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施術費用 | ■初診 3,300円 ■MRI検査 8,000円〜12,000円 ■注入治療 198,000円〜1,078,000円※1 ■リハビリ 29,800円〜49,800円 |
診療時間 | ■受付 9時〜18時 ■MRI診断予約 24時間受付 |
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まとめ
PRP療法は、関節の痛みの治療や加齢による肌悩みに用いられる再生医療です。PRP療法が人気を集めたことで、効果を得られない、失敗したなどの口コミを耳にするケースも増えました。
PRP療法は、施術を受けたい部位や施術部位の状態、肌質によってPRPの注入量や濃度、注入する深さを見極めなければなりません。
症例数が少ないクリニックや医師によるPRP療法は、しこりができる、感染症を起こすなど、失敗するリスクがあります。PRP療法を検討中の方は、症例数が多いクリニック、知識や技術がある医師が在籍しているクリニックで施術を受けましょう。
※本記事の情報は2023年4月時点のものです。
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