ゴルフをプレーする方や日常生活のなかで肘や手首を酷使する方は、ゴルフ肘の痛みに頻繁に悩まされる傾向にあります。
ゴルフ肘の痛みや違和感が気になるときは、原因や症状、対処法をよく理解したうえで適切な治療を選ぶことが大切です。
症状を放置すれば、重症化して普段の生活におけるさまざまな場面で支障をきたす恐れがあります。
そこで今回は、ゴルフ肘とは何かについてを痛みの原因とともに解説しつつ、症状や発症しやすい方の特徴を紹介していきます。
対処法や検査方法、適切な治療法についてもあわせて解説するため、ゴルフ肘による痛みが気になる方はぜひ参考にしてみてください。
ゴルフ肘とは
ゴルフ肘は、正式には上腕骨内側上顆炎(じょうわんこつないそくじょうかえん)といいます。主に肘や手首の使いすぎにより起こる症状の総称です。
なかでもゴルフによって発症に至るケースが多いため、一般的にはゴルフ肘と呼ばれます。
肘の内部には内側上顆と呼ばれる組織があり、さまざまな原因で組織を酷使すると負担に耐えられなくなり、炎症につながる仕組みです。
ゴルフ肘を発症すると、肘や肘周辺に痛みや違和感を覚えるようになります。はじめのうちは軽い痛みのみですが、重症化すると日常生活におけるさまざまな動作にも影響が出る恐れがあります。
肘や肘周辺に痛みや違和感などの症状がでたときは、放置しないように注意が必要です。
ゴルフ肘の痛みの原因
ゴルフ肘で肘が痛いと感じたときは、今後症状を悪化させないため、また、再発防止のためにも原因を知る必要があります。
ゴルフ肘の痛みや違和感の原因は、次のとおりです。
- スイングで脇が開いている
- 手打ちになっている
- クラブを強く握っている
- 過度に両肘に力が入った状態でスイングしている
ゴルフプレーにおいて、上記のことに心当たりがある方は多いのではないでしょうか。原因について一つ一つ詳細を紐解いていきましょう。
スイングで脇が開いている
スイングの際に脇が必要以上に開いている方は、ゴルフ肘を発症しやすい傾向にあります。脇が開いていると、負荷が分散されず腕に集中するため、スイングを続けることで腕がより多くのダメージを負う仕組みです。
主に、ゴルフスイングが不安定な状態の初心者や中高年の方によく見られる傾向にあります。
手打ちになっている
ゴルフでスイングする際に、体幹ではなく手打ちの方も、肘を痛めやすいため注意が必要です。体全体を使ってスイングすれば、負担は体全体に分散されます。
しかし手や腕のみを使って打つ手打ちでは、手や腕のみに負担が集中してしまいます。手打ちも、初心者や中高年以降のプレーヤーに多い傾向です。
グラブを強く握っている
ゴルフクラブを握る際に力みすぎることが、ゴルフ肘の原因になることもあります。クラブを強く握ることは、肘に過度な負担を与える要因になるためです。
緊張や癖が原因で、クラブをつい力強く握ってしまうことは意外に少なくありません。とくに癖で強く握ることが多い方は、ゴルフプレーに伴ってゴルフ肘を発症しやすいため注意が必要です。
過度に両肘に力が入った状態でスイングしている
両肘に力を入れた状態でのスイングも、ゴルフ肘を引き起こす大きな原因の一つです。スイングフォームが安定していないと、両肘周辺が必要以上に力んでいることが多くなります。
振り抜く際のフォームが不安定の方は、ゴルフ肘を発症する恐れがあるため注意しましょう。
ゴルフ肘の症状
力みやフォームの癖が原因でゴルフ肘に陥ると、肘に痛みを感じるほかに、主に次のような症状が現れることがあります。
- 腫脹
- 熱感
上記の症状は具体的にどのような症状なのか、詳細をチェックしていきましょう。
腫脹
腫脹とは、炎症が原因で腫れの症状が現れることです。ゴルフ肘になると、痛みを伴って徐々に腫れの症状が出てきます。
ゴルフプレーのあとに、痛みや腫れによる肘部分の膨張を感じると思ったら、ゴルフ肘を発症している可能性があります。
熱感
熱感とは、患部が熱を帯びている状態を指します。ゴルフ肘の症状で熱感があるときは、主に炎症が原因です。したがって痛みとともに肘周辺が通常よりも熱いと感じたときは、ゴルフ肘発症の可能性が考えられます。
ゴルフ肘の腫脹や熱感、痛みの症状は、初期のものであれば日常生活維持に問題はありません。しかし放置すれば、肘の曲げ伸ばしをする際に違和感や強い痛みを覚えたり、重いものを持つときに通常よりも負担を感じたりすることが多くなります。
ゴルフ肘の可能性があると感じたら、後述する対処法で早めに対策しましょう。
ゴルフ肘を発症しやすい方の特徴
ゴルフ肘を発症しやすい方には、傾向や共通点が見られます。
主な特徴は次のとおりです。
- 手の力のみで打つ方
- 手首へ過剰に負荷をかけている方
- 家事で手首をよく使う主婦の方
- パソコンを使ったデスクワークの方
心当たりがある方は、ゴルフプレーに伴ってゴルフ肘を発症しないよう十分に注意しましょう。あらかじめゴルフ肘を発症しやすい方の特徴を把握すれば、予防にもつながります。
上記の発症しやすい方の特徴をそれぞれ見ていきましょう。
手の力のみで打つ
手打ちの状態でスイングする方は、ゴルフ肘を発症しやすい傾向にあります。体幹ではなく手の力のみに頼って打つと、スイングするたびに手に大きな負担がかかるためです。
とくにゴルフに慣れていない初心者の方は、体幹がうまく使用できず手打ちになる傾向にあります。ゴルフ肘を発症しないためには、手の力のみで打たないように十分に気をつけましょう。
手首へ過剰に負荷をかけている方
手首へ過剰に負荷をかけている方も、ゴルフ肘を発症しやすいため要注意です。ゴルフの際は、手打ちになったり必要以上に力んだりすることが手首に過度な負荷を与える要因になります。
しかし、手首への負荷がかかる動作は、ゴルフのみに限ったことではありません。日常生活のなかでも、手首に負荷をかけてしまう場面が多くあります。
たとえば、スマートフォンを片手で持って長時間操作することや、一度に多くの文字を書くことも手首への負荷が増える原因です。
手首や肘の周辺を使用する動作を日常的に繰り返している方は、知らず知らずのうちにゴルフ肘の状態に陥っている可能性があります。
家事で手首をよく使う主婦の方
家事で手首をよく使用する主婦の方も、ゴルフ肘を発症する場合があります。たとえば、家事のなかでは雑巾を絞る、窓や床を布巾で強くこすることなどは、手首に負荷がかかる動作です。
手首を酷使して内側上顆に強い負荷を与え続ければ、ゴルフ肘、すなわち内側上顆炎につながる可能性があります。手首への負担が気になる方は、適度に休憩を入れながら家事をすることが大切です。
掃除や片付けの際に必要以上に力を入れすぎていないか、ゴルフ肘予防のためにあらためてよく見直してみましょう。
パソコンを使ったデスクワークの方
パソコンを使用したデスクワークの方も、ゴルフ肘の症状には悩まされやすい傾向があります。パソコン使用時は、キーボードやマウスの操作が必要です。キーボードやマウスの操作一つ一つは、手首に大きく負担を与えるものではありません。
しかし操作が長時間に及ぶ場合は、常に軽い負担が手首にかかった状態になるため、結果的に負担が蓄積します。肘も常に曲げた状態のため、筋肉が凝りやすいことも難点です。
したがって普段から長時間のデスクワークでパソコンを操作する方は、ゴルフ肘を発症しやすいといえるでしょう。
肘に痛みを感じた時の対処法
ゴルフ肘が原因で痛みを感じたときは、次の対処法を実践して肘への負荷を減らしましょう。
- 安静にする
- 湿布を貼る
- サポーターを装着する
肘への負荷が減れば、炎症も徐々に収まり、痛みもなくなっていきます。
それぞれの対処法の詳細を見ていきましょう。
安静にする
ゴルフ肘で痛みが気になるときは、まず安静にすることが重要です。肘や手首の酷使は避け、大きく負荷をかけるような動作はいったんストップしましょう。
運動や仕事、家事の合間に肘の痛みを感じたときは、少なくともしばらくの間休むことが大切です。また、休憩をはさんだあとも痛みや違和感が残るときは、その日は作業を中断し、別の日にあらためることが重要になります。
湿布を貼る
ゴルフ肘による肘の痛みがつらいときは、湿布を貼って痛みを軽減させることもおすすめです。炎症の症状を抑えることが目的になるため、湿布は冷湿布が望ましいでしょう。
ただし、湿布を貼りさえすれば症状改善につながるわけではありません。やはり患部を休めることは欠かせないため、湿布を貼ったうえで、できる限り肘や手首に負担をかける動作は控える必要があります。
サポーターを装着する
ゴルフ肘による痛みが気になるときは、サポーターの装着も効果的な対処法です。サポーターを装着すれば肘への負担が抑えられるため、炎症の症状も徐々に収まるといえるでしょう。
痛みも軽減されるため、とくに痛みがあっても作業を続けないといけないときに有効です。
ゴルフ肘の検査方法
ゴルフ肘の症状が見られるときには、症状の程度によっては整形外科の受診も必要になるでしょう。
整形外科クリニックでは、ゴルフ肘の患者に対して、具体的に次のような方法で検査を実施します。
- 問診、視診、触診
- 手関節屈曲テスト
- 超音波検査
- レントゲン検査
上記の検査方法とは具体的にどのような方法なのか解説します。
問診・視診・触診
まずは、整形外科クリニックの医師による問診、視診、触診が実施されます。
- 問診:患者に症状や悩みを聞いて症状を確認する
- 視診:肘の状態を目視で確認して状態を調べる
- 触診:肘や肘周辺に触れて状態を確認する
どのような自覚症状があるのかヒアリングしたり、肘を実際に触って圧痛があるのか、腫れによる肘の膨張があるのかなどをチェックしたりします。
圧痛とは、手で押して圧迫した際に感じられる痛みのことです。ゴルフ肘の症状があるときには、肘を伸ばしたときに圧痛が確認できるため、触診ではまず圧痛の有無を確認する場合が多いといえます。
手関節屈曲テスト
整形外科クリニックでは、手関節屈曲テストと呼ばれる検査が実施されることもあります。手関節屈曲テストとは、手首を手のひらの方へ曲げた状態で力を入れて、痛みが感じられるかチェックする検査方法です。
ゴルフ肘の場合は痛みが内側の肘に現れるため、痛みがあったときはゴルフ肘と診断できます。
超音波検査
ゴルフ肘にかかわる診療では、超音波検査を実施し、ほかの疾患に該当しないか確認する場合もあります。
超音波検査は、検査したい部位に超音波が出る機器を当て、検査した部位から跳ね返ってくる超音波を画像として映し出す仕組みの検査方法です。ゴルフ肘の超音波検査では、主に腱部分の肥厚や血流シグナルの上昇が見られます。
レントゲン検査
ントゲン検査(X線検査)でゴルフ肘の検査をする場合もあります。レントゲン検査はX線を使用し、体の内部を画像に映し出す検査方法です。
一つの方向からX線を検査部位に当てると、部位を通過したX線の差が影として現れ、患部のモノクロ画像が映し出される仕組みです。
ただしレントゲン検査のみでは状態がわからないこともあるため、必要に応じて超音波検査も実施されます。整形外科クリニックでは上記のとおりさまざまな検査を実施し、症状の有無や度合いを確認します。
ゴルフ肘の治療法
ゴルフ肘による痛みや違和感に悩んだときは、どのようなかたちで治療をするのか、具体的な治療法をあらかじめ把握することが重要です。
ゴルフ肘の治療法には、次のようにさまざまな選択肢があります。
- 薬物療法
- 温熱療法
- リハビリテーション
- 保存療法
- 手術療法
- 体外衝撃波治療
治療法はそれぞれの症状の重さや体質、要望などに合わせて決定していきます。
一つ一つの治療法について、詳細を整理していきましょう。
薬物療法
ゴルフ肘の薬物療法は、主に外用薬や内服薬を用いた治療法です。一般的には非ステロイド系消炎鎮痛剤、いわゆる痛み止めを使用し、痛みを抑えます。
鎮痛効果のある湿布を貼って痛みを和らげることも、薬物療法の一つです。初期症状の場合は外用薬や内服薬を処方されることが多いですが、症状が重い場合は、ステロイド注射を実施するケースもあります。
温熱療法
温熱療法は、患部を温めて症状を緩和させる治療法です。整形外科クリニックでは専用の温熱治療器を使用するため、患部を芯から効率的に温められます。
自宅で筋肉を温める応急処置的な温熱療法よりも、スムーズな改善が見込める点が大きなメリットです。
リハビリテーション
ゴルフ肘の症状が気になるときは、リハビリテーションによって回復を目指すこともあります。リハビリテーションは運動療法の一つで、ゴルフ肘の治療では、重い痛みが出なくなってからスタートします。
ゴルフ肘の治療でおこなわれる主なリハビリテーションは、肘周辺のストレッチです。リハビリテーションで適度に肘の筋肉をトレーニングすれば、肘にかかる負担を抑えられるでしょう。
さらに肘の柔軟性もアップすることにより、炎症が起こりにくくなる点もメリットです。また、休養中に実践できる肘のストレッチには、肩の後方部分を伸ばすストレッチがあります。
次の手順で積極的に実践してみましょう。
- 背筋をしっかり伸ばした状態で立つ
- 片腕を地面と水平になるように伸ばし、もう片方の手で肘を抱え込む
- 伸ばしている腕は肩の高さでキープし、肘が下がらないように気をつける
上記の手順と注意点を押さえてストレッチすれば、ゴルフ肘予防にもつながります。
仕事や家事で肘や手首を酷使するときは、適度に休憩しつつ、ストレッチでよくほぐすことも実践していきましょう。
保存療法
ゴルフ肘の症状で肘が痛いときは、多くの場合はまず保存療法で経過を見ます。保存療法は手術療法以外の治療を指すため、厳密にいえば、前述のリハビリテーションや薬物療法も保存療法です。
保存療法でよく見られる治療として、ほかには装具療法があります。装具療法とは、サポーターやテーピングなど負担軽減につながる装具を使用した治療法です。
サポーターやテーピングを使用すれば、肘への負荷をほどよく軽減できます。物理的に患部を保護するため、外から加わるダメージも抑えられるでしょう。
そのためゴルフ肘でクリニックを受診した際には、医師から肘用のサポーターをもらうことも多くあります。
手術療法
ゴルフ肘による痛みや違和感がひどく、日常生活に支障をきたすレベルにまで重症化しているときは、手術に至るケースもあります。
ゴルフ肘治療で主におこなわれる手術の種類は、次のとおりです。
- 関節鏡視下滑膜切除術
- 骨棘切除術
一つ目の関節鏡視下滑膜切除術は、痛みを発生させている腱の変性した組織部分を切り取る目的でおこなわれる手術です。
30分程度で終わるため、手術といってもそこまで大がかりなものではありません。関節鏡視下滑膜切除術が実施される場合は、入院も不要なため日帰り手術が可能です。
二つ目の骨棘切除術は、骨と骨がこすれることで生まれるトゲ、骨棘(こつきょく)を切除する手術です。一般的には変形性膝関節症のための手術ですが、症状によってはゴルフ肘の治療においても実施される場合があります。
ただし、手術をすれば必ずしもゴルフ肘の痛みや違和感が改善されるわけではありません。効果には個人差があるため、人によっては手術を実施してもなかなかゴルフ肘による痛みや違和感が治らないこともあります。
体外衝撃波治療
ゴルフ肘の治療では、体外衝撃波治療と呼ばれる治療が選べるクリニックもあります。体外衝撃波治療とは、もともと腎臓結石を粉砕する目的で採用されてきた治療法でした。
しかし昨今は、整形外科でも痛み改善につながる新たな治療法として取り入れられている傾向にあります。体外衝撃波治療は、専用の医療機器を用いて、非常に高出力の衝撃波を患部に与える点が特徴です。
この衝撃を受けると、痛みを発生させている自由神経終末が減少し、手根屈筋群や手根伸筋群の血流が改善する可能性があります。すなわち肘に衝撃波を与えれば、ゴルフ肘による痛みの軽減につながる仕組みです。
効果に個人差はあるものの、体外衝撃波治療は近年の整形外科の分野において、痛み改善を効率的に目指せる治療として期待されています。
体外衝撃波治療は自由診療に該当するため、保険は適応外です。場合によっては治療費がかさむ可能性があることを認識しておく必要があります。さまざまな治療法を用いても、ゴルフ肘の改善が見込めないときに検討しましょう。
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まとめ
ゴルフ肘を患うと、肘に大きな痛みや違和感を覚える可能性があります。ゴルフプレーの際に必要以上に力んでスイングする方、家事や仕事で手首や肘を酷使する方は注意が必要です。
初期症状は軽い痛みのみですが、症状を放置すればより強い痛みになり、日常生活にも支障をきたす可能性があります。ゴルフ肘が原因で仕事がしにくい、重いものが持ち上げられないなどの悩みにもつながるため注意が必要です。
ゴルフ肘の症状に悩んだときは、具体的な原因や対処法、治療法を理解し、早めに適切な対処をおこないましょう。
※本記事の情報は2023年3月時点のものです。
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