膝関節の靭帯損傷・断裂
膝の靭帯について
膝関節は、大腿骨(太ももの骨)・脛骨(すねの骨)・膝蓋骨(膝のお皿)の3つの骨から構成されており、膝関節の安定性を保つために、前後左右に4つの靭帯があります。
(画像引用)日本整形外科学会|膝靭帯損傷
膝の靭帯損傷の症状は?
急性期(受傷後3週間ほど)では、膝の痛みや腫れ、可動域制限が出ます。急性期を過ぎると症状は落ち着いてきますが、損傷部位によっては膝の不安定感が徐々に目立ってくることがあります。不安定感があるまま放置していると、半月板損傷や、軟骨損傷などを生じ、慢性的な痛みや腫れが出現するので、早期に治療が必要です。
靭帯損傷の重症度分類
グレードⅠ
主な症状は痛みで、靭帯のストレステストでは膝関節に不安定感がない状態。
グレードⅡ
靭帯のストレステストを行った時に、少し不安定感がある状態。
グレードⅢ
靭帯のストレステストを行った時に、かなりの不安定感がある状態。他の靭帯の損傷や、半月板損傷も疑われる。
前十字靭帯(ACL)とは?
脛骨の前方から大腿骨に向かう靭帯です。脛骨が前方へずれないように抑制したり、捻った方向に動きすぎないように制御しています。
前十字靭帯(ACL)
損傷・断裂の症状は?
症状のチェック
- 損傷時に「ブチッ」と断裂音がする
- 膝に強い痛みが出る
- 関節内の出血が起こり数時間で大きく膝が腫れる
- 膝の曲げ伸ばしが難しくなる
- 膝がグラグラと不安定感がある
前十字靭帯(ACL)
損傷・断裂の原因は?
接触型
ラグビー、柔道、相撲などのコンタクトスポーツで、膝に直接外力が掛かることで靭帯が損傷・断裂します。
非接触型
サッカー、バスケットボール、スキーなど、急に止まったり、急な切り返しで膝を捻る動作、ジャンプなどが多いスポーツで、靭帯が損傷・断裂します。
前十字靭帯(ACL)
損傷・断裂の検査・診断
前方引き出しテスト
膝を90°ほど曲げた状態で、脛骨を前方に動かすことで、靭帯が機能しているかを確認する。
ラックマンテスト
膝を30°ほど曲げた状態で、大腿骨と脛骨を前後に動かすことで、靭帯が機能しているかを確認する。
前十字靭帯(ACL)
損傷・断裂の治療法は?
前十字靭帯は血流が乏しく、自然治癒が困難なため、保存療法での靭帯の修復は難しいとされおり、外科的手術による靭帯の再建が、第一選択となります。手術後はニーブレース(膝固定装具)での固定や、リハビリテーションが必要となります。
後十字靭帯(PCL)とは?
脛骨の後方から大腿骨に向かう靭帯で、前十字靭帯の2倍の太さを持ち、膝関節の軸を担う、強度の高い靭帯です。脛骨の後方へのずれや、捻った方向に動きすぎないように制御しています。
後十字靭帯(PCL)
損傷・断裂の症状は?
症状のチェック
- 受傷直後は激しい痛みが出ますが時間経過とともに軽減する
- 膝の裏の圧痛が出る
- 関節内の出血が起こり徐々に大きく膝が腫れる
- 膝の曲げ伸ばしが難しくなる
後十字靭帯(PCL)
損傷・断裂の原因は?
コンタクトスポーツ
ラグビー、柔道、相撲などの接触型のスポーツで、膝に直接外力が掛かることで靭帯が損傷・断裂します。
交通事故・転倒
交通事故や転倒した際に、膝を強打することで損傷・断裂します。
後十字靭帯(PCL)
損傷・断裂の検査・診断
脛骨後方引き出しテスト
膝関節を90°曲げた状態で、脛骨を把持して前後の動揺を確認します。後方への不安定性を認める場合は陽性となります。
超音波検査(エコー検査)
X線検査では写らない、筋肉・腱・靭帯の損傷の抽出に優れています。また、MRI検査では評価できない、関節を動かしながらの検査も可能です。
MRI検査
診察で、後十字靭帯の損傷・断裂が疑われた場合、MRI検査で靭帯の状態を確認し、診断を確定します。また、半月板損傷合併の有無も同時に評価できます。
後十字靭帯(PCL)
損傷・断裂の治療法は?
後十字靭帯単独での損傷・断裂では、膝関節に若干の不安定さが残ることがありますが、日常生活に支障をきたすことは少ないため、まずは保存療法が選択されます。
装具療法
膝関節の不安定さが軽度であれば、テーピングやサポーターで固定し、靭帯に加わるストレスを軽減させます。
リハビリテーション
痛みのない範囲で、段階的に関節可動域訓練、筋力トレーニングなどを行います。
手術療法
膝関節の痛みや不安定さが残る場合、前十字靭帯損傷・断裂と同様に靭帯を再建する手術が行われます。
内側側副靱帯(MCL)とは?
膝の内側につき、大腿骨(太ももの骨)と脛骨(すねの骨)をつなぐ靭帯です。他の靭帯に比べて大きな靭帯で、膝関節内側の安定性を保つ働きをしています。
内側側副靱帯(MCL)
損傷・断裂の症状は?
症状のチェック
- 膝の内側に痛みが出る
- 膝の内側に腫れが出る
- 膝の曲げ伸ばしが困難となる
- 歩行が困難となる
内側側副靱帯(MCL)
損傷・断裂の原因は?
接触型
ラグビー、柔道、相撲などのコンタクトスポーツで、膝に直接外力が掛かることで靭帯が損傷・断裂します。
非接触型
サッカー、バスケットボール、スキーなど、急に止まったり、急な切り返しで膝を捻る動作、ジャンプなどが多いスポーツで、靭帯が損傷・断裂します。
内側側副靱帯(MCL)
損傷・断裂の検査・診断
外反ストレステスト
仰向けで膝を30°ほど曲げた状態で膝を固定し、外側に伸張を加えて、膝の内側の痛みや不安定性を確認します。膝を伸ばした状態でも症状が出る場合は、前十字靭帯(ACL)損傷・断裂の合併も考えられます。
アプレー牽引テスト
うつ伏せで膝を90°曲げて、大腿部を固定します。下腿を上方に引っ張り上げて痛みの有無を確認します。
MRI検査
診察で、内側側副靭帯の損傷・断裂が疑われた場合、MRI検査で靭帯の状態を確認し、診断を確定します。また、半月板損傷合併の有無も同時に評価できます。
内側側副靱帯(MCL)
損傷・断裂の治療法は?
単独損傷では損傷の程度に関わらず、保存療法が選択されます。
保存療法
膝の痛みや腫れが強い場合は、ギプスやシーネなどで固定を行います。膝の安静を基本とし、湿布や内服薬にて経過をみます。また、ステロイド注射にて症状の軽減を図ります。併せてリハビリテーションで、膝関節の可動域訓練や筋力トレーニングが必要です。
手術療法
保存療法で改善が見られない場合や、前十字靭帯など、他の靭帯との複合損傷では、靭帯を縫合する手術が行われる場合があります。
外側側副靭帯(LCL)とは?
膝の外側につき、大腿骨(太ももの骨)と脛骨(すねの骨)をつなぐ靭帯です。膝関節外側の安定性を保つ働きをしています。
外側側副靭帯(LCL)
損傷・断裂の症状は?
症状のチェック
- 膝の外側に痛みが出る
- 膝の外側に腫れが出る
- あぐらをかくような動作で不安定感がある
- スポーツなどでの素早い方向転換時に不安定感がある
- 稀に膝から下に痺れや感覚障害をもたらす「腓骨神経麻痺」を伴うことがある
外側側副靭帯(LCL)
損傷・断裂の原因は?
日常生活で損傷に繋がることは稀で、交通事故による靭帯への強い衝撃や、スポーツで膝が内側に向かって折れるような負荷、膝を捻る動作が原因となります。
外側側副靭帯(LCL)
損傷・断裂の検査・診断
内反ストレステスト
仰向けで膝を30°ほど曲げた状態で膝を固定し、内側の伸張を加えて、膝の外側の痛みや不安定性を確認します。
外側側副靭帯(LCL)
損傷・断裂の治療法は?
保存療法
膝の痛みや腫れが強い場合は、ギプスやシーネなどで固定を行います。
膝の安静を基本とし、湿布や内服薬にて経過をみます。また、ステロイド注射にて症状の軽減を図ります。併せてリハビリテーションで、膝関節の可動域訓練や筋力トレーニングが必要です。
手術療法
保存療法で改善が見られない場合や、他の靭帯との複合損傷では、別の組織から靭帯を再腱する手術が行われる場合があります。