高位脛骨骨切り術はO脚に変形した脚を矯正し、変形性膝関節症の進行を抑えるための手術です。
他の手術のように人工関節を使用せず、自身の関節を残した状態で症状改善が期待できることから、体に人工物が残りません。そのため、手術完了後も特別な活動制限がなく、リハビリを終えてからはスポーツ活動も許可されます。
今回は高位脛骨骨切り術についての基本的な情報とともに、費用相場や適用外になるケースについてまとめました。
膝の不調をなくす高位脛骨骨切り術に興味がある方は、ぜひ参考にしてください。
高位脛骨骨切り術(HTO)とは?
高位脛骨骨切り術について詳しい情報をまとめました。
高位脛骨骨切り術(HTO)とは
高位脛骨骨切り術ではO脚に変形した脚の骨をX脚ぎみに矯正して、変形性膝関節症の進行を緩やかにします。内側の軟骨の擦り減りでO脚変形になる場合には、すねの骨を切り、骨の向き合う位置を調整します。
機能回復のリハビリは必要ですが、人工物が体内に残らず自身の骨や関節が活用されるため、手術後も趣味やスポーツが継続可能です。
高位脛骨骨切り術の種類
高位脛骨骨切り術には2つの種類があり、最近はオープンウェッジ法が主流です。
どちらの手術が自身に適しているのかは、医師に相談してみてください。
オープンウェッジ法
オープンウェッジ法では、脛骨の内側から外側に向けて骨を切り、内側を開いて人工骨を入れ金属で固定します。
体に与える影響が少なく、手術一週間後より歩行訓練を開始すれば、リハビリ完了後には日常生活に制限なくスポーツ活動も実現可能です。
また、挿入した人工骨や固定具は新しい骨が形成されたら取り外します。骨の形成にかかる期間には個人差があり、1年半程度を目安として医師と相談のうえで取り外し時期を決めていきます。
クローズウェッジ法
クローズウェッジ法では、脛骨の外側から骨を切り短縮させて矯正します。術中にレントゲンで角度を確認したうえで、人工骨と金属プレートをスクリューで固定します。
オープンウェッジ法と同じように、新しい骨が形成されたあとに人工骨や金属プレートなどを取り外し可能です。
オープンウェッジ法に比べて患者への負担が大きいことから、矯正が必要な角度が大きい場合や他の疾患を合併している際に選択される手術法です。
高位脛骨骨切り術の費用相場
高位脛骨骨切り術には150万円程度の費用がかかりますが、保険適用の治療になるため患者の費用負担は、3割負担の方は約40万円、1割負担の場合は約14万円です。
1か月程度の入院が必要であり、追加で入院費用がかかるでしょう。
また、挿入した人工骨やプレートを体内から取り除く手術には別途入院と手術の費用が必要です。手術やリハビリに必要な費用の総額については、事前に医療機関に確認してください。
高位脛骨骨切り術の適応外となるケース
高位脛骨骨切り術はすべての患者が受けられるとは限りません。高位脛骨骨切り術の適用外になる方は次のとおりです。
- 変形性膝関節症の進行が末期の方
- 靭帯を損傷している方
- 関節の外側が擦り減っている方
- 骨粗しょう症の方
- 70歳以上の高齢の方
高位脛骨骨切り術は自身の関節を残したまま症状を改善させる手術であるため、現段階で関節が損傷している方や骨の形成に問題があると判断された方は、手術を受けられません。
医療機関により別の基準が設けられている可能性も考えられることから、自身が高位脛骨骨切り術の適用内であるかは事前に確認してください。
高位脛骨骨切り術のメリットとデメリット
高位脛骨骨切り術のメリットとデメリットは次のとおりです。メリットとデメリットを比較して、自身が優先するべき事柄を明らかにしておきましょう。
高位脛骨骨切り術のメリット
高位脛骨骨切り術のメリットは、人工物が体内に残らない点にあります。手術時には人工骨やスクリューを体内に残しますが、骨の形成が進んだ数年後には、挿入した人工物をすべて取り除きます。
そのため、人工関節置換術と異なり手術後の活動制限がなくスポーツ活動も可能です。手術をしても趣味や仕事を諦める必要がないことから、多くの人が自身の希望する生活を実現しています。
高位脛骨骨切り術のデメリット
高位脛骨骨切り術のデメリットには、回復やリハビリに時間がかかる点があります。
手術のために必要な入院期間は3〜5週間であり、退院後も数か月の時間をかけてリハビリを続けながら骨の癒合を待たなくてはいけません。
さらにリハビリ期間は、患部に体重がかかると痛みを感じる方が多いです。スポーツができるまで回復するためには、1年以上の期間が必要でしょう。
また、高位脛骨骨切り術は変形膝関節症の進行を緩やかにするものの、完全に抑えることはできません。そのため、変形膝関節症の痛みが残る場合もあります。
高位脛骨骨切り術に関するよくある質問
高位脛骨骨切り術を検討している方から集まる質問をまとめました。その他の質問については、直接医師に確認してみてください。
疑問点や不安がない状態で手術が受けられるとよいでしょう。
高位脛骨骨切り術の入院期間はどのくらい?
高位脛骨骨切り術の入院期間の目安は3〜5週間です。退院後も定期的に観察を続けながら数か月のリハビリを進める必要があります。
また、数年後に挿入した人工物を取り除く手術には1週間程度の入院が求められます。
高位脛骨骨切り術後はいつ頃スポーツに復帰できる?
高位脛骨骨切り術後は、リハビリを進めながら骨の形成を待つ必要があります。個人差はあるものの、スポーツに復帰可能な時期は術後1年以上経過したあとになるでしょう。
スポーツの内容や骨の形成スピードで異なるため、医師に確認しながらスポーツの再開時期を決めてください。
高位脛骨骨切り術にリスクはある?
高位脛骨骨切り術は体にメスを入れる手術であるため、一定のリスクが存在します。具体的には感染症、エコノミー症候群などの合併症が起こる可能性があるでしょう。
また、1か月以上の入院が必要なことから、長期のお休みが取れない方には希望しにくい手術です。
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まとめ
高位脛骨骨切り術は人間の再生力を活用した治療であり、最終的に体内には人工物が残りません。そのため、膝の痛みや人工関節のせいでスポーツを含むさまざまな活動を諦めずに済むでしょう。
ただし、1か月以上の入院や長いリハビリが必要で、変形性膝関節症の痛みが残る可能性も考えられます。自身の症状や今後求める生活にあわせて、医師と相談しながら最適な治療方法が選べるようにしてください。