人工膝関節置換術は、変形した膝関節を人工関節に置き換える大がかりな手術のため、高額なイメージがある方も多いでしょう。
「全部で費用はいくらかかるのだろう」「助成制度は利用できるのかな」など、費用面で不安を抱く方も少なくありません。
手術に伴うリスクのみならず、全体的にかかる費用も気になるところです。
本記事では、人工膝関節置換術にかかる費用と利用できる助成制度、手術のメリットやデメリットについて解説します。
人工膝関節置換術にかかる費用が気になる方や、そもそも手術を受けるか悩んでいる方は、ぜひ参考にしてみてください。
人工膝関節置換術にかかる費用
人工膝関節置換術にかかる費用は、手術前の検査と入院費の2つに分けられます。
人工膝関節置換術は健康保険が適用されるため、年齢や収入に応じて1割から3割が自己負担となります。
手術前の診療と検査の費用は、約5万円です。保険適用で3割負担の場合、自己負担額は約1万5千円、1割負担の方は5千円程度かかります。
一方で人工膝関節置換術の手術や入院にかかる費用は、約180〜230万円です。
保険適用で3割負担の場合、自己負担額は約60〜80万円です。1割負担の方は、20万円程度となります。
手術にかかる費用として、手術の実施料とインプラント代、麻酔料が含まれています。
入院費に含まれているのは、処置や検査、薬、食事などです。
部屋代や差額ベッド代、その他レンタル料などはクリニックにより異なるものの、人工膝関節置換術の費用は変わりません。
人工膝関節置換術にかかる費用は、年齢や収入により異なることを把握しましょう。
人工膝関節置換術に利用できる助成制度
助成制度とは、国や地方公共団体が医療費の全額または一部を補助する制度です。
人工膝関節置換術では、主に2つの助成制度が利用できます。
- 高額療養費制度
- 限度額適用認定制度
助成金の受給には申請が必要になるものの、自己負担額を減らすためには制度を利用しましょう。
高額療養費制度
人工膝関節置換術の医療費が高額な場合、高額療養費制度の申請を検討しましょう。
高額療養費制度とは、1か月あたりの医療費が限度額を超えた場合、申請すると超えた分が払い戻される制度のことです。
高額療養費制度を利用すれば、人工膝関節置換術にかかる費用は10万円程度になります。
しかし限度額は年齢と収入により定められており、自己負担額が10万円以上となるケースもあります。
また高額療養費制度は、自身が加入している保険団体への申請が必要です。
申請しなければ高額療養費制度を利用できないため、注意しましょう。
ほかにも高額療養費制度は、一時的に医療費を立て替える必要がある点がデメリットです。
たとえば医療費が180万円の場合、3割負担であれば一時的に60万円支払わなくてはなりません。
あくまでも高額療養費制度は、限度額を超えた分が払い戻される制度であり、医療費が支給されるまで一時的に負担する必要があります。
突然の大きな出費に慌てたくない方は、あらかじめ高額療養費制度についてよく理解しましょう。
限度額適用認定制度
高額療養費制度は、一時的に医療費を立て替える必要があるのに対し、限度額適用認定制度は窓口での支払いが自己負担限度額までとなる制度です。
69歳までの方は、加入中の保険団体から事前に限度額適用認定証を受け取り、医療機関の窓口に提示します。
所得区分によるものの、70歳以上の方であれば健康保険証と高齢受給者証の2点を提示するのみで窓口の負担を減らせます。
限度額適用認定制度は多額の医療費を立て替える必要がないため、最初から窓口での負担が軽減される点がメリットです。
高額療養費制度はあとから払い戻されるものの、一時的な支払いは大きな負担となります。
先に高額な医療費を支払えない方は、限度額適用認定制度を利用するとよいでしょう。
しかし高額療養費制度と限度額適用認定制度は、最終的に支払う金額が同じです。
一時的に立て替えて返還を受けるか、事前に限度額を支払うかの違いであり、どちらかが得をするわけではありません。
限度額適用認定制度を利用する際は、事前の申請を忘れないようにしましょう。
人工膝関節置換術を受けるメリット
人工膝関節置換術は、膝の痛みが軽減されるのみではありません。
膝の痛みが和らぐことにより、さまざまな副次的効果が得られます。
大まかな費用を把握したところで、人工膝関節置換術を受けるメリットも理解しましょう。
脚の痛み軽減
人工膝関節置換術の大きなメリットは、膝の痛みが大幅に軽減されることです。
人工膝関節置換術は、変形や破壊が進んだ膝関節を人工関節に置き換えるため、痛みの根本的な原因から解決できます。
手術から1週間程度で痛みは少なくなり、動きやすくなる方が大半です。
膝の痛みにより日常生活が制限されていた方でも、手術後は徐々にできることが増えていくでしょう。
しかし、手術前の痛みの大部分は取り除けるものの、膝周りの筋肉や組織が人工関節に慣れるまで違和感が残る場合もあります。
術後の症状は3か月続く場合もあり、人工関節が馴染むまで半年程度かかるケースも珍しくありません。
痛み止めの薬やリハビリテーションなどで、痛みを軽減させることが大切です。
姿勢がよくなる
膝の痛みが軽減して歩きやすくなることで、姿勢がよくなる点もメリットです。
さらに人工膝関節置換術にはO脚を矯正する効果があり、外側にカーブした膝が伸びる点も姿勢がよくなる理由といえます。
膝が内側に開いた状態であるX脚の方も同様に、姿勢の改善効果が期待できます。
O脚やX脚が改善されることで、ジーンズやスカートが履けるようになるでしょう。
姿勢が悪いと実年齢よりも老けて見えるほか、肩こりや腰痛などの原因になりかねません。
姿勢がよくなることで若々しく見えたり、体の不調が改善されたりなど、さまざまな副次的効果が期待できます。
関節への負担軽減
人工膝関節置換術を受けることで、ほかの関節への負担が軽減される点もメリットです。
膝が痛いとかばうように歩くため、知らぬ間に足首や腰など、ほかの関節に大きな負担がかかります。
人工膝関節置換術により膝の痛みが取り除かれると、かばう必要がなくなり、他関節への負担が軽減される仕組みです。
とくに末期の方は足首や腰などの負担が大きく、膝以外の関節の変形も進んでいる可能性があります。
人工膝関節置換術を受ければ、ほかの関節にかかる負担も軽減され、よい影響をもたらすでしょう。
関節が安定する
人工膝関節置換術のメリットとして、関節の安定感アップも挙げられます。
損傷や変形により不安定な関節を人工関節に置き換えることで、関節が安定する仕組みです。
膝の骨や靭帯が欠損して歩きにくい方でも、人工膝関節置換術を受けることで安定感が生まれるでしょう。
関節が安定すると歩きやすくなるのみでなく、早歩きも可能になります。
しかし、手術後すぐに関節が安定するわけではありません。
置き換えた人工関節を安定させるためにはリハビリテーションが必要であり、早ければ手術の翌日から膝を動かしはじめます。
地道にリハビリテーションをおこなえば、安定した歩行が可能になるでしょう。
生活が豊かになる
生活が豊かになる点は、人工膝関節置換術の大きなメリットといえます。
手術により歩きやすくなると活動範囲が広がり、人生の楽しみが増えるためです。
痛みが原因で外出を控えていた方でも、買い物やスポーツ、旅行などがおこなえるようになります。
アクティブな方からすると、活動範囲の広がりは大きな喜びです。
また、活動範囲が広がることで、低下していた筋力も徐々についてくるでしょう。
人工膝関節置換術を受けるデメリット
人工膝関節置換術には多くのメリットがある反面、いくつかのデメリットも存在します。
メリットのみならず、デメリットやリスクも知ることが大切です。
デメリットも把握し、手術を受けるか検討してみてください。
関節がゆるむ
手術に用いられる人工関節は、時間とともに緩んだり摩耗したりするリスクがあります。
体重や活動強度、骨の強さなどによるものの、人工関節の耐用年数は20年程度です。
しかし、体重増加や激しいスポーツなどにより人工関節に負荷がかかると、耐用年数は短くなります。
緩みや破損が生じた場合、再手術で新しい人工関節に取り替える必要があります。
また人工関節の摩耗により骨の大部分が溶けていると、再手術の難易度が上がるため、定期的な診察を受けることが大切です。
人工関節の緩みや摩耗を最小限に抑える方法は、適切な体重を維持するほか、負担の大きいスポーツは避けることです。
日常生活で関節の負担を軽くすれば、人工関節の耐用年数は伸びるでしょう。
細菌感染のリスク
人工膝関節置換術は、細菌に感染するリスクがあります。
感染症にかかる確率は1〜3%と高くはないものの、実際に発症している方がいることも事実です。
人工膝関節置換術の感染症は、手術中の細菌の侵入による早期感染症と術後の遅発感染症の2つに分けられます。
術後は皮膚の傷から細菌が侵入するのみでなく、自身の疾患が原因で感染する場合もあります。
たとえば、風邪や虫歯、胃潰瘍、水虫、糖尿病などの疾患です。
感染症を発症すると、再手術が必要となるケースが多い傾向にあります。
手術前後は体調管理に気を付けたり、疾患を治療したりなど、自身でも注意しましょう。
血栓ができるリスク
人工膝関節置換術は、血栓(血のかたまり)ができる可能性もあります。
手術中は出血に対する体の反応で止血機能が強まるほか、長時間ベッドに横たわるため、脚部の血流が滞ることで静脈内に血栓ができやすくなります。
静脈内に血栓ができることを深部静脈血栓症と呼び、血管を流れて肺の動脈の中に詰まると、最悪の場合は肺塞栓症を引き起こす危険な病気です。
肺塞栓症を併発すると、呼吸困難や胸の痛み、意識の低下などの症状が現れます。
深部静脈血栓症を防ぐために、クリニックでは薬の服用やマッサージ機などで予防します。
術後はできる限り早期に動くことで、血栓の予防が可能です。
人工膝関節置換術の治療の流れ
人工膝関節置換術は、手術を受けるのみで完了するわけではありません。
ここからは、人工膝関節置換術の具体的な流れを解説します。
クリニックへの受診からリハビリテーションまで細かく解説するため、全体的な流れを把握できるでしょう。
1:クリニック受診
人工膝関節置換術を受けたいクリニックに受診します。
人工膝関節置換術が受けられる場所は、大学病院や総合病院、整形外科、専門クリニックなどです。
自宅からの距離や入院にかかる細かな費用などを比較し、自身に適したクリニックを選びましょう。
まずクリニックでは、膝関節の診察がおこなわれます。
手術が必要だと判断されて同意すると、医師から手術前の説明を受けます。
具体的には、手術の目的や期待できる効果、方法、注意点についてなどです。
術前説明はインフォームドコンセントとも呼ばれ、手術について理解を深めるために欠かせません。
手術に対して疑問や不安を抱いている方は、遠慮なく医師に質問しましょう。
2:検査
術前検査は、入院の約1か月前におこなわれます。
手術に必要な検査は、採血や採尿、心電図、呼吸機能検査、胸部レントゲン、下肢の血栓チェック、鼻腔の細菌検査です。
検査結果に問題がある場合は、該当の科に受診する必要があります。
3:入院
手術日の前日に入院します。糖尿病のような合併症がある方は、入院が数日間となるケースもあります。
入院中におこなわれることは、最終的な血液検査や尿検査、麻酔の説明、身体のチェックなどです。
また手術の前日は飲食できる時間が決められているため、医師の指示に従いましょう。
4:手術
手術当日は、注射や点滴などの事前準備をおこないます。
ストレッチャーで手術室に移動したら全身麻酔を受け、手術がはじまります。
手術にかかる時間は、2時間程度です。手術が終了したら、病室に戻ります。
5:リハビリテーション
術後1〜2日程度でリハビリテーションがはじまります。
歩行器や松葉杖などで人工関節周りの筋肉を強化したり、バランスや可動域を回復させたりします。
リハビリテーションは、日常生活に復帰するために大切です。真剣に取り組みましょう。
6:通院
手術やリハビリテーションの終了後でも、定期的に通院する必要があります。
退院して3〜4週間後に初回の検診がおこなわれます。初回の検診後は、術後3か月、6か月、1年目の通院間隔です。
定期的な通院では、人工関節の緩みや摩耗、部品に問題がないかをチェックします。
人工関節には緩みや摩耗などのリスクがあるため、忘れずに通院しましょう。
人工膝関節置換術の費用についてよくある質問
人工膝関節置換術は手術であるため、費用以外にも不安を抱く方がいるでしょう。
最後に、人工膝関節置換術についてよくある質問に回答します。
人工関節置換術の成功率は?
人工関節置換術の成功率は、90%以上です。安定した成功率が報告されています。
しかし、人工関節に緩みや摩耗が生じた場合、インプラントを入れ替える再置換術をおこなわなければなりません。
オックスフォード大学の研究によると、人工関節置換術の再置換率は術後10年で約4%、術後20年で約10%です。
手術に成功しても、手術から時間が経つほど再手術の可能性は高くなります。
人工膝関節置換術は何歳まで受けられる?
人工膝関節置換術に年齢制限はありません。
膝関節の痛みや変形により日常生活が困難だと感じ、手術を希望するのであれば受けられます。
しかし、高齢であるほどリスクが高くなる傾向にあります。
たとえば、リハビリテーションで体力が続かない、回復が遅いことで血栓症のリスクが高まるなどです。
人工膝関節置換術に年齢制限はないものの、とくに高齢の方はリスクを理解して手術を受ける必要があります。
人工膝関節置換術を受けるタイミングは?
基本的に人工膝関節置換術を受けるタイミングは、60歳以上で末期の変形性膝関節症と診断されたときです。
なぜなら人工関節は経年劣化するため、若い方がおこなうと再手術で入れ替える可能性が高くなるためです。
しかし、60歳未満の方でも末期の変形性膝関節症と診断されたり、保存療法を実施しても症状が激しく進行していたりする場合は対象となります。
人工関節置換術を受けたあとの行動は制限される?
人工関節置換術後は、いくつかの行動制限があります。
たとえば、正座やあぐら、足を組む、しゃがむ、激しいスポーツなどです。
人工関節に大きな負担がかかると耐用年数が短くなるため、術後の行動には十分注意しましょう。
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最終手段として人工膝関節置換法を検討している方には、新たな選択肢といえます。
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どの再生医療が適しているかは整形外科の専門医が丁寧に診察するため、はじめて再生医療を受ける方も安心して相談できるでしょう。
副作用や拒絶反応などのリスクが低い
シン・整形外科が扱う再生医療は、いずれも自身の細胞や血液を利用するため、副作用や拒絶反応のリスクを抑えられます。
人工膝関節置換術は患部を切開し、人工関節に置き換える大掛かりな手術となり、約1か月の入院が必要なうえ拒絶反応や合併症などのリスクもあります。
また、膝に異物を入れることに抵抗がある方も少なくありません。
再生医療は切開せず自身の細胞、血液を活用するため、低リスクで日帰り可能な負担の少ない治療法です。
手術によるリスクが不安な方はもちろん、術後すぐに仕事や家事に復帰したい方、体力がない方にもおすすめです。
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シン・整形外科では、万が一に備えた2つの保証制度が用意されています。
1つ目は、再生医療を受けたうえで十分な効果を得られなかった場合に、無料で1回分の治療を追加できる再治療保証です。
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2つ目のリスク保証では、再生医療により健康を害した場合に備え、再生医療サポート保険に加入しています。
どのような治療でもリスクはゼロではないため、上記のような保証は安心できるポイントになるでしょう。
シン・整形外科では無料電話相談を設けているため、再生医療が気になる方はぜひ気軽に相談してみてください。
まとめ
人工膝関節置換術にかかる費用は、約200〜250万と高額です。
しかし、高額療養費制度や限度額適用認定制度などを利用すれば、自己負担額を10万円程度に抑えられます。
一時的な負担がつらい方は、限度額適用認定制度の利用がおすすめです。
制度の利用には申請が必要になるものの、全体的な費用を減らすためには活用しましょう。
また、人工膝関節置換術にはメリットがある反面、デメリットもあります。
メリットのみならずデメリットも理解したうえで、手術をおこなうことが大切です。
人工膝関節置換術を受ける際は、本記事で紹介した治療の流れを参考にしてみてください。