指の第一関節に腫れや痛みを感じた場合、ヘバーデン結節を疑う女性も多いかもしれません。
へバーデン結節は手指の第一関節に腫れや痛みが生じ、次第に変形していく疾患ですが、原因は明らかにされていません。
ただし、中高齢の女性に多くみられるため、性別や年齢が発症に関係していると考えられています。
この記事では、へバーデン結節の発症に関係するとみられている要素や、へバーデン結節患者の共通点を紹介します。
あわせて、へバーデン結節の予防法も解説するため、へバーデン結節が疑われる症状がある方はぜひ参考にしてください。
へバーデン結節の原因は明らかにされていない
指の第一関節に腫れや変形、屈曲を起こすヘバーデン結節(けっせつ)は、原因不明の疾患です。
ヘバーデン結節は、第一関節の手の甲側に関節を挟んで2つのコブができる点が特徴で、そのコブを結節(けっせつ)といいます。
親指から小指まですべての指に起こる可能性があり、複数の指に同時に起こる方も多くいます。
病気の発見者であるイギリスのヘバーデン(Heberden)医師にちなんで、ヘバーデン結節と呼ばれています。
ヘバーデン結節は、年齢に伴う変形性関節症の一つであることが分かっています。
変形性関節症とは、関節の表面を覆う軟膏が老化したり摩耗したりすることで、骨に直接負荷がかかり、骨が徐々に変形していく疾患です。
変形性関節症による骨の変形の程度は個人差があるため、すべての方に強い変形が起こるわけではありません。
指の第一関節に症状が起こる場合がヘバーデン結節であり、親指の付け根に起こると母指CM関節症、人差し指から小指までの第2関節に起こるとブシャール結節と呼ばれます。
ヘバーデン結節のはっきりとした原因は不明ですが、発症に関係しているのではないかと考えられている要素が次の3つです。
- 女性ホルモンの乱れ
- 遺伝性
- 外傷
それぞれ詳しく解説します。
女性ホルモンの乱れ
ヘバーデン結節は40代以降の女性に多くみられるため、更年期障害による女性ホルモンの乱れが発症に関係していると考えられています。
女性ホルモンには、エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)の2種類がありますが、ヘバーデン結節に関係があるとみられているのはエストロゲンです。
更年期には、組織をなめらかに保つ作用があるエストロゲンの分泌が減少します。
エストロゲンの分泌量が減ると、腱や腱鞘、神経の周りにある滑膜が炎症を起こし、腫れやすくなります。
またエストロゲンの減少は軟骨のなめらかさを減らすため、軟骨をすり減らす原因のひとつです。
軟骨がすり減ると関節が不安定になり、周辺の骨が変形して痛みが生じます。
遺伝性
ヘバーデン結節の遺伝性は証明されていませんが、母や祖母、姉妹など家族内で多発する例が多くみられます。
血縁者でヘバーデン結節を発症した方がいる場合は、体質が似ていることを考慮し予防のため指先に負担がかからないように注意が必要です。
外傷によるもの
ヘバーデン結節は、骨折のような外傷に引き続いて発生する場合もあります。
外傷によるヘバーデン結節は、外傷後に指の第一関節に腫れや痛みが出て、数か月で炎症と痛みは治まりますが、関節の肥大や屈曲、変形が起こり、可動域が狭まります。
外傷性のヘバーデン結節は、外傷を負った指にのみ症状が現れ、他の指には症状が出ません。
へバーデン結節患者の共通点
ヘバーデン結節の原因は特定されていませんが、患者に次のような共通点があると報告されています。
- 40代以降の女性に多い
- 日常的に手指を使用している
- 甘いものを好んで食べる
- 加工食品やレトルト食品をよく食べる
一つずつ詳しく紹介します。
40代以降の女性に多い
ヘバーデン結節は、40代以降の中高齢の女性が多く発症する疾患です。
さらに、男女比は1:10ともいわれるほど、患者は女性に偏っています。
40代以降との発症タイミングから、更年期障害による女性ホルモンの乱れが関係していると考えられます。
日常的に手指を使用している
ヘバーデン結節を発症している方の多くが、仕事や趣味などで日常的に手をよく使うと答えています。
また、スマートフォンを小指で支えるように持つ方は、小指のヘバーデン結節を誘引する可能性があると指摘されています。
甘いものを好んで食べる
ヘバーデン結節は、甘いものをよく食べる方や肥満の方に多くみられる疾患です。
糖分の摂りすぎは体の糖化を招き、関節の柔軟性を失わせるため、関節痛の要因のひとつと考えられています。
糖分の多い食事や肥満の進行がヘバーデン結節を悪化させると考えられているため、甘いものを控えると予防や症状改善に有効です。
加工食品やレトルト食品をよく食べる
加工食品やレトルト食品には、日常的に摂りすぎると健康への悪影響が懸念されるトランス脂肪酸が多く含まれています。
トランス脂肪酸は炎症を起こす油といわれており、摂りすぎるとヘバーデン結節の炎症にも影響を及ぼすと考えられます。
へバーデン結節の症状
ヘバーデン結節で起こる一般的な症状は、次のとおりです。
- 第一関節の痛み
- 腫れや皮膚の赤み
- 粘液嚢腫(ミューカスシスト)
- 第一関節の変形
- 強く握れない
- 指の動きが悪くなる
一つずつ解説します。
第一関節の痛み
ヘバーデン結節の代表的な症状は、ピリピリやチクチクと表現される第一関節の痛みです。
ヘバーデン結節を発症すると、軟骨がすり減り、関節の隙間が狭くなります。
同時に関節を支える靱帯も緩み、関節が不安定になるため、結果として関節周囲の骨に負担がかかり、骨棘(骨のトゲ)が発生して痛みが生じます。
ヘバーデン結節による第一関節の痛みは、指を使うときに限りません。
じっとしているときでも起こる場合があります。
また、手をぶつけたときに激痛が走るように、痛みに過敏になる傾向があります。
腫れや皮膚の赤み
ヘバーデン結節では、指の第一関節の腫れや赤みも症状のひとつです。
ヘバーデン結節は、第一関節を挟んで2つのコブができる点が特徴ですが、このコブを結節といいます。
腫れや熱感があるときは患部の冷却や関節の安静が効果的です。
粘液嚢腫(ミューカスシスト)
粘液嚢腫とは、第一関節の手の甲側にできる水ぶくれで、ミューカスシストとも呼ばれます。
粘液嚢腫は第一関節の変形により、関節液が外に膨らんでいるもので、変形性膝関節症で膝に水が溜まる症状と同じ仕組みです。
粘液嚢腫は関節の袋とつながっているため、針を刺して水を抜くと細菌が入り感染するおそれがあります。
粘液嚢腫を自身で潰すことは避けてください。
第一関節の変形
ヘバーデン結節は、症状が出たり治まったりを繰り返す疾患です。
放置していると関節の炎症により関節を包んでいる袋が緩み、屈曲方向に曲がり始めます。
変形の程度には個人差がありますが、最終的に10年ほどかけて関節が変形します。
第一関節の変形は、複数の指に生じる傾向にあります。
またヘバーデン結節では関節のなめらかさも徐々に失わるため、関節の可動域が狭まり指が伸びきらない状態になります。
強く握れない
指のこわばりや第一関節の痛みにより、手を強く握れないこともヘバーデン結節の症状のひとつです。
包丁で堅いものが切れなかったり、ビンの蓋が開けられなかったりなど、日常生活で不便を感じるかもしれません。
ヘバーデン結節は関節を支える靱帯も緩むとされているため、指でものをつまむときに関節が不安定になり、指先の力が入りにくくなる場合もあります。
指の動きが悪くなる
ヘバーデン結節では腫れたコブの部分が第一関節を圧迫するため、指を曲げたり伸ばしたりする動きが難しくなる方もいます。
とくに指をまっすぐに伸ばしにくくなる方が多いようです。
箸を使った食事や食器洗い、キーボードのタイピングなどで不便を感じる場合もあるでしょう。
へバーデン結節にならないための予防法
ヘバーデン結節と遺伝との因果関係は明確にされていませんが、母や祖母がヘバーデン結節を発症している方は、予防することをおすすめします。
ヘバーデン結節の予防法には、次の3つが挙げられます。
- 栄養バランスの取れた食事を摂る
- 加工食品や甘いものを避ける
- 女性ホルモンのバランスを整える
上記のポイントはヘバーデン結節の症状軽減にもつながるため、すでに症状が出ている方にもおすすめです。
自身の生活に取り入れやすいことから、ぜひ実践してみてください。
栄養バランスの摂れた食事を摂る
ヘバーデン結節は肥満により悪化するといわれているため、栄養バランスの取れた食事で体重増加に気をつけましょう。
サバやイワシなどの青魚に含まれるDHAやEPAは、炎症を抑えるはたらきをサポートするといわれています。
また、アルコールは過剰摂取により血管を拡張させるため、ヘバーデン結節のズキズキとした痛みを増幅させるおそれがあります。
お酒の飲みすぎには注意が必要です。
加工食品や甘いものを避ける
加工食品や甘いものに多く含まれるトランス脂肪酸や糖分は、関節の周りに炎症を起こすことが分かっています。
トランス脂肪酸の摂取を控えるためには、油脂をオリーブオイルやココナッツオイルなど植物由来のものへの変更がおすすめです。
また糖分や糖質は甘いものばかりでなく、ご飯やパンなどの炭水化物にも含まれています。
毎食の主食の量を少し減らすと、糖質の摂りすぎを避けられるでしょう。
女性ホルモンのバランスを整える
ヘバーデン結節は女性ホルモンの乱れが関係していると考えられるため、女性ホルモンバランスを整えることは予防につながります。
女性ホルモンのエストロゲンに成分が似ていると注目されているのが、豆腐や味噌、納豆などの大豆製品に含まれる大豆イソフラボンです。
大豆イソフラボンを日常的に摂取すると、ヘバーデン結節の予防や症状改善につながる可能性があるといわれています。
また、エストロゲンの代謝を促進する効果のあるビタミンEやビタミンB6の摂取も、女性ホルモンバランスの正常化に効果的です。
エストロゲンに構造が似ている成分には、大豆イソフラボンの他にエクオールもあります。
大豆イソフラボンやエクオールに特化したサプリメントも販売されているため、サプリメントの摂取もひとつの方法です。
へバーデン結節の治療法
ヘバーデン結節は治療せずに放置していると骨の変形が進み、元に戻せなくなります。
第一関節で曲がってしまうため、できる限り早く治療を始めましょう。
ヘバーデン結節の治療法として挙げられるのは、次の4つです。
- 手術療法
- 薬物療法
- 保存的療法
- 再生医療
一つずつ解説します。
手術療法
ヘバーデン結節では、保存的療法で痛みが改善しない場合や変形が進み日常生活に支障をきたす場合に手術が検討されます。
ヘバーデン結節の手術は、関節形成術や関節固定術が一般的です。
関節形成術は、でっぱった骨や水ぶくれ(粘液嚢腫)を切除する手術法で、見た目の改善が期待できます。
関節固定術は、第一関節にスクリューネジを挿入し、前後の骨を固定してぐらつきを改善させる手術法です。
関節固定術は最も使いやすい位置で関節を固定するため、指を自由に曲げられなくなりますが、痛みはなくなります。
薬物療法
ヘバーデン結節の痛みが強い場合は、消炎鎮痛剤の内服薬や、湿布や塗り薬などの外用薬を使います。
発症直後の急性期には、関節内へのステロイド注射も有効です。
ヘバーデン結節の進行を予防するためには、炎症を早期に沈静化させることが重要です。
大豆イソフラボンやエクオールなどの女性ホルモンのバランスを整えるサプリメントや、体調改善のための漢方の服用も検討されます。
保存的治療
ヘバーデン結節の保存的療法とは、局所のテーピングやサポーター、固定リング、アイシングなどです。
変形した関節では関節を支える靱帯が緩むため、不安定な状態になり軟骨がすり減りやすくなります。
テーピングやサポーターで関節を動かさないようにすると、痛みや腫れを軽減させられます。
再生医療
再生医療とは、血液や脂肪など自身の細胞を活用し体が本来持つ自己治癒力を高め、痛みを緩和したり損傷した部位を修復したりできる治療法です。
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まとめ
へバーデン結節は指の第一関節にコブができ、痛みや変形が起こる原因不明の疾患です。
はっきりした原因は分かっていませんが、更年期以降の女性に多くみられることから女性ホルモンの乱れが関係しているとみられています。
また、手指の使いすぎや肥満も発症に関係している可能性があることから、安静にしたり栄養バランスのとれた食事をとったりすることが予防になるでしょう。
へバーデン結節は変形性関節症の一種であり、再生医療で痛みの軽減や損傷部位の修復が期待できます。
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<参考>
シン・整形外科