膝関節の疾患で代表的な変形性膝関節症を治療する方法の一つに、自身の血液や脂肪を用いて自己治癒力を高める再生医療があります。
従来まで膝の治療法は、症状を進行させないための保存療法と症状が悪化した際の手術療法のみでしたが、新たな治療法として再生医療が選択肢に加わり、手術しなくても痛みを軽減できるようになりました。
再生医療は自身の血液や脂肪を使用するため手術療法よりも副作用のリスクが低い点が特徴です。
現在膝の疾患がありどのような治療を受けるべきか悩んでいる方は、一つの選択肢である再生医療の特徴や費用について詳しくチェックしてみましょう。
膝関節の再生医療とは
再生医療とは、その名のとおり人間が元々もった自然治癒力を活用し、体の一部を修繕・回復させるもので、組織や臓器をもとの状態に戻すことを目標とした治療です。
膝関節の代表的な疾患に変形性膝関節症がありますが、従来までは変形性膝関節症の症状が進み運動療法やヒアルロン酸注射による効果が薄れて痛みが強くなると、人工関節に移ることが一般的な治療でした。
人工関節は確実な痛みの軽減が期待できますが、1か月程度の入院と継続的なリハビリが必要な点や、走るスポーツができなくなることがデメリットになります。
再生医療は人工関節や骨切り術など手術療法に移る前の段階に受けられる治療であり、将来の手術療法を避けたい方や保存療法のみでは痛みが強く出る方におすすめの治療法です。
しかしヒアルロン酸注射やストレッチによる筋力トレーニングよりも効果的である一方で、費用がかかったり効果に個人差があったりなどのデメリットもあるため、事前にメリットとデメリットを比較する必要があります。
患者の症状にあわせて選ぶ
膝関節の疾患でも、症状が軽い方は一度の注射で済むことがあれば、重度の方は複数の再生医療を併用することになり、症状に合わせた治療が提案されます。
たとえば膝に対する再生医療は血液からPRPを採取する方法がありますが、軟骨の損傷度によっては脂肪から抽出する幹細胞治療を勧められることもあります。
幹細胞治療では軟骨再生の症例報告が出てきている等、痛み改善に加え、組織修復の期待できるため、高額ではありますが痛みが強い方にはおすすめの治療法です。
また再生医療はがん治療中の方や発熱がある方は治療を受けられません。膝の状態やクリニックの治療方針によって適切な方法が異なるため、ここでは一般的な流れについて紹介します。
症状が軽い
膝の痛みに関して一度もクリニックを受診していない方は、再生医療を受ける前に運動療法やヒアルロン酸注射による痛みの軽減処置から始まります。
何度か保存療法を継続しても痛みがおさまらない場合は、再生医療に移って治療を進めることが一般的な流れです。
MRIをはじめとする各種検査で診察後、症状が軽い場合は1回注射を打ち経過観察に移り、再生医療の効果を実感できるのは注射後約2週間後〜1か月後程度です。
症状が重い
MRI検査にて膝関節の疾患が重度と判断されると、最初から複数の再生医療を用いたスケジュールで治療が進むこともあります。
ただし症状が悪化していれば再生医療よりも人工関節術の方が適している場合もあるため、再生医療以外の治療法についても詳しい膝の専門クリニックでの診断をおすすめします。
膝の再生医療の種類と費用目安
再生医療にはいくつかの種類があり、膝の状態や痛みの度合いによって適合するものが異なります。
どのような再生医療でも自身の血小板を用いるため、アレルギー反応や拒否反応のリスクが少ない点はメリットといえます。
しかし次で紹介する再生医療は現在保険適用外であるため、費用がかかる点がデメリットです。
費用の概算は各種検査後に医師から説明がありますが、ここでは事前にかかる最低金額についてチェックしておきましょう。
PRP療法
PRP療法は、濃縮された血小板と成長因子を膝関節内に注射する治療法です。PRPとは血液を遠心分離器にかけて、血小板が多く含まれている層である多血小板血漿を抽出したものを指します。
傷がかさぶたになる治癒力は血小板によるはたらきであり、血小板から放出された成長因子が組織を修復するため、膝関節への治療としても有効なものとして活用されています。
膝の疾患で一般的な再生医療がPRP療法であり、安価なクリニックでは数万円ほどの価格から治療を受けられます。
PRPを活用した治療には多くの種類があり、より高い効果が期待できる治療となると20万円〜30万円以上かかることもあります。
PRP療法も幹細胞治療と同じく、対応する代表的な疾患は変形性膝関節症ですが、靭帯損傷や肉離れなどスポーツで負った傷でも用いられます。
またPRPを活用した治療にもPRP-FDや、PRR-PRO、APSなどの種類があるため、次で費用や特徴をチェックしましょう。
PRP-FD療法
PRP-FD療法は、PRPから成長因子を抽出し濃縮することで、2倍以上の成長因子を含ませることができるものです。
従来のPRP療法と比較して成長因子の量が多く、PRP療法よりも効果を期待できることに加え、注射後の痛みも比較的少ないことも特徴です。
成長因子にも数多くの種類がありますが、PRP-FDに含まれる成長因子は組織や細胞の修復から細胞分裂の促進など、膝の痛みを改善する効果が期待できます。変形性膝関節症や半月板損傷など膝に対してのみでなく、変形性股関節症や手首、足首の炎症にも用いられる治療です。
PRP療法よりも高い効果があり、費用は1回20万円前後と比較的リーズナブルな価格で治療できます。
APS療法
APS療法は、従来のPRP療法よりも高濃度な成長因子と抗炎症性物質を用いた治療法です。
APS療法は従来の方法で採取したPRPに専用のキットを用いて、抗炎症性物質をはじめとする関節にかかわる成分を抽出したものを使用します。
数ある膝疾患のなかでもとくに変形性膝関節症と相性のよい治療で、次世代の治療法ともいわれています。
価格は幹細胞治療よりも比較的安価な30万円前後ですが、通常のPRP療法より高額な治療となるため、慎重な判断が必要です。
膝の再生医療は保険適用と適用外がある
膝に処置する再生医療は現在多くが保険適用外ですが、特定の疾患は保険適用になり比較的安価で治療を受けられます。
どのような疾患が保険適用となるのかチェックしてみましょう。
保険適用の再生医療
膝関節で再生医療を受ける場合、外傷が原因となる軟骨欠損症や離断性骨軟骨炎が保険適用の疾患になります。
そのため激しく動いたあとやスポーツのあとに膝が強く痛む方は、保険適用で再生医療を受けられる可能性があります。
保険適用外の再生医療
膝関節の疾患で代表的なのは変形性膝関節症ですが、患者数は多くても外傷による疾患ではないため、現在は保険適用外で自費診療となります。
自費診療の再生医療は費用が高額になるため、医師と相談を重ねながら決めましょう。
再生医療が必要な膝関節症の原因
再生医療を選択できる膝の疾患には変形性膝関節症や半月板損傷が挙げられます。
膝関節症は主に次が原因で起こるため、受診前に一度セルフチェックしてみましょう。
軟骨のすり減り
膝関節の代表的な疾患である変形性膝関節症は、軟骨のすり減りが大きな原因です。
軟骨がすり減る主な原因は加齢ですが、肥満や遺伝、過去の怪我などさまざまな要因が重なって進行を早めることもあります。
軟骨がすり減ると痛みや違和感で膝が思うように動かせなくなる症状が表れて、進行が進むと脛骨と大腿骨が直接ふれるようになり痛みが強まって変形につながります。
再生医療のなかでも幹細胞治療は摩耗してすり減った膝軟骨の再生も期待できるため、痛みが強くなった方や手術療法に移りたくない方におすすめの治療法です。
関節の炎症
長年の摩耗によりすり減った軟骨や半月板は細かい欠片となり、膝関節内の滑膜を刺激します。滑膜が刺激されると炎症を起こして痛みにつながるため、膝を動かすと痛むようになります。
とくに半月板は加齢により少しの外力でも損傷して、強い痛みとともに急に膝が動かなくなるロッキング現象に悩ませられることもあるでしょう。
炎症が進むと安静時でも膝が痛み慢性化する可能性もあるため、早めに整形外科や膝関節専門のクリニックを受診して進行を遅らせる必要があります。
膝関節の再生医療を受けるメリット
膝関節に対する再生医療は、運動療法で効果が実感できない方や手術療法に移行したくない方にとってメリットの多い治療法です。
再生医療には主に次のようなメリットが挙げられます。
ひざ軟骨の痛みや炎症を抑える
運動療法やヒアルロン注射では痛みや炎症がおさえきれなかった場合でも、再生医療であれば運動療法よりも効果が期待できて、手術療法よりも手軽に処置が可能です。
日常生活で膝を曲げ伸ばす際に痛みや違和感が強く出る方は、変形性膝関節症の可能性が高いです。
変形性膝関節症は膝に痛みのある疾患で一番可能性が高いもので、放置して悪化すると人工膝関節置換術や骨切り術などの手術療法に移ります。
手術療法は膝の根本的な治療であり痛みや違和感をなくす一番効果的な方法ですが、合併症や出血のリスクが高くリハビリも必要になるデメリットも多くあります。
再生医療は手術療法と同じく痛みや炎症を軽減させて、再び自身の足でしっかり歩けるようになることが期待できる治療法です。
膝関節内で炎症が起こっていたり軟骨がすり減っていたりなどが原因の疾患でも有効であるため、変形を進行させないためにも早めに専門クリニックや整形外科を受診しましょう。
副作用のリスクが低い
再生医療は自身の血液から採取したPRPを膝に注入するため、アレルギー反応や感染症のリスクが手術療法よりも低いことがメリットです。
最初は注射箇所が痛んだり腫れたりする副作用が見られますが、症状は数日でおさまります。
手術療法の場合は傷口から細菌が侵入する合併症や、患部に血栓ができやすくなるリスクがあることを理解して治療を受ける必要があります。
また年齢的に早い段階で人工膝関節にする場合は、長期間の使用で人工関節がゆるんで膝が痛くなることもあり、再び人工関節を入れなおす治療が必要になることも考えられるため、さらにリスクが高まります。
高齢で手術による感染症や拒否反応が心配な方にとっては大きなメリットとなるでしょう。
日帰りで受けられる
再生医療は日帰りで治療を受けられる手軽さもメリットです。
膝が痛む場合に再生医療を受ける際のスケジュールの例は、まずMRI検査や問診で膝の状態をよく確認して再生医療による効果が期待できるか診察することが1回目です。
再生医療を受けると決めたら診察の同日、もしくは次の来院で次は採血をして、血液がPRPになるのを待ちます。3週間ほどで作成が済むため、予約した日に注射を受けて治療は終了です。
注射後はそのまま帰宅して、日常生活を送りつつ医師の指示のもとリハビリを続けましょう。リハビリの必要性に関しては、膝の状態やクリニックの判断で異なります。
治療後は経過観察のために来院する程度で、何度も通院する必要はありません。
手術療法のように手術当日からリハビリまで約1か月病院で過ごすこともなく、処置当日に帰宅が可能とすぐに日常生活に復帰できます。
激しい運動は1週間程度できませんが、その点を加味しても手軽さの面では手術療法よりも優れています。
膝関節の再生医療を受けるデメリット
膝疾患の手術療法に代わるメリットの多い再生医療ですが、一方で効果の不安定さや高額な費用に関してはデメリットとなります。
保存療法による効果や手術療法のデメリットと比較しつつ、これからの生活を考慮して検討しましょう。
効果には個人差がある
再生医療はリスクが少ないため安全ですが確実な効果のない治療法です。体質や膝の状態によっては期待していた改善効果が得られない可能性もあります。
治療後に思ったような効果が得られないと高額な費用を支払い治療を受けた意味がないため、先にどの程度の効果が期待できるか検査しますが、確実ではありません。
効果の幅のみでなく症状が改善するスピードもそれぞれで、処置から数日程度で改善することもあれば、1か月経ちようやく少し改善したという場合もあります。
また効果の個人差は大きいですが、一説では肥満体型の方は効果が出にくいとされています。
その確たる原因も判明していないため、確実な効果を求める方は今後の手術療法も検討しましょう。
費用がかかる
膝の痛みに対するPRP療法の多くは保険適用外であるため、どのような種類の再生医療でも高額な費用がかかります。
とくに効果的といわれている幹細胞療法は治療費が100万円を超えることも珍しくありません。
手術よりも手軽な治療法ではありますが、価格面で気軽に受けられないことが大きなデメリットといえます。
クリニックにより採用している再生医療の種類やPRPの抽出方法も異なるため、費用や特徴を比べつつクリニックを選びましょう。
膝の再生医療を検討すべき方の特徴
膝の疾患を抱えている方で、とくに再生医療での治療がおすすめの方は次のような特徴があります。
- ヒアルロン酸注射の効果が薄れている
- 痛み止めを飲み続けている
- 手術はしたくない
- 長期間の入院ができない
従来の保存療法は保険診療の範囲ではありますが、膝の根本的な治療には至らず、進行を止めて悪化させないことを目標としています。
しかし保存療法を続けて進行を遅らせても、悪化する可能性は十分考えられます。
膝の状態が悪化すると骨切り術や人工関節術など、入院やリハビリが必要な手術療法に移ることになるでしょう。
再生医療は費用がかかるデメリットはありますが、手術よりもリスクが低く入院も必要ない手軽さから、保険適用外でも治療を希望する方が増えています。
膝の再生医療を受けるクリニックの選び方
膝の再生医療は費用が高額である分、患者一人一人と向き合って状態に適した治療を勧めるようなクリニックを選ぶことが大切です。
ここでは施術を任せられるクリニックを下調べする際にチェックすべきポイントを紹介します。
予約が取りやすい
再生医療は入院が必要ない治療ですが、経過観察のための通院や状態によっては複数回注射を打つことも考えられます。
通院時の予約がとりやすいクリニックであれば無理にスケジュールを開ける必要もないため、仕事を休まずに診察を受けられます。
新しい技術や治療法を採用している
膝の再生医療は従来の治療法と比較すると新しい種類であり、日々研究が進められている分野でもあります。
クリニック選びでは、在籍している医師が膝の再生医療に対して積極的で、新たな治療法や技術を取り入れているかどうかもチェックしましょう。
たとえばPRPに含まれる成長因子を濃縮させて効果を高める治療を採用しているクリニックもあります。
また膝の回復を早めるためには再生医療での治療のみでなく、治療後のアフターケアや回復を早めるための運動療法も大切なポイントです。
膝の専門クリニックでは包括的な治療もおこなわれているため、膝の治療に特化したクリニックを選ぶことをおすすめします。
症状にあう治療法を提案してもらえる
膝の再生医療を受ける際は、MRIで膝の内部を診察するのみでなく、生活の状況や求める効果についてしっかりヒアリングするクリニックを選びましょう。
一口に膝の再生医療といっても膝の状態と患者の希望に応じた治療法があるため、診断や相談時に費用の概算や治療期間について細かく説明するクリニックがおすすめです。
また同じ血液から採取したPRPでも、濃縮されて1回で効果が期待できるものや複数回打つことを前提とした低濃度のものなど、さまざまな種類があります。
ただPRPを注射するのみでなく、膝の状態によってどの再生医療が適切で一番効果が期待できるかという説明をするクリニックであれば、納得して治療を受けられるでしょう。
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まとめ
従来の膝に対する治療法は運動療法や手術療法のみであり、痛み止めやヒアルロン酸注射などの保存療法で効果が薄れると手術療法に移ることが一般的でした。
現在は膝を根本的に治療する再生医療が浸透し、自身の足でスポーツを楽しんだり趣味を続けたりできる期間を延ばせるようになりました。
保険適用外で費用がかかることや効果の不安定さがデメリットですが、適合するかどうかはMRI検査で判断されて、診察後にはかかる費用も事前にわかります。
現在膝の疾患で治療方法に悩んでいる方は、手術療法に移る前に再生医療をぜひ検討してみてください。