腱板損傷のリハビリは、痛みの軽減や可動域の回復、筋力の向上を目的におこないます。リハビリ方法は損傷の程度や個人の状態に応じて異なりますが、一般的に2つの治療パターンがあります。
一つ目は保存療法として投薬と一緒にリハビリをおこない症状を緩和する方法、二つ目は手術後に肩の機能の回復を目的におこなう方法です。
本記事では、腱板損傷のリハビリ方法を2つの治療パターンに分けて詳しく解説します。腱板損傷のリハビリテーションは、専門的な指導と継続的な取り組みが大切です。医師やリハビリスタッフの指示を守り、早期回復のためにも毎日続けましょう。
腱板損傷の原因や症状
腱板損傷とは、肩のインナーマッスルである腱板筋群が損傷する症状です。手を上げたり、横になったりすると痛みを感じることから、放置すると日常生活に影響を与える可能性があります。
また、一度損傷すると自然治癒する可能性は低いため、痛みがひどくなるようなら適切な治療が必要です。ここでは、腱板損傷になる原因や症状の特徴をまとめました。腱板損傷の疑いがある方は、ぜひチェックしてみてください。
腱板断裂の原因
腱板損傷の原因は、大きく分けて3つあります。
- 加齢による変化
- 外傷
- 肩の筋肉の使いすぎ
とくに多い原因は、加齢による体の変化です。年齢を重ねるにつれて、腱板が脆くなり傷つきやすくなります。そのため、腱板損傷は60歳以上の方によく見られる症状です。また、肩を強く打ったり、転んだりしたことで腱板損傷を引き起こすケースもあります。
ほかにも、肩を酷使したことで腱板損傷になるオーバーユース(使いすぎ)も原因の一つです。たとえば、野球選手のピッチャーやバレーボールなどは、肩を酷使する動作を繰り返すため、腱板損傷になりやすい特徴があります。
力仕事に従事している方も腕や肩に負荷がかかることから、腱板損傷を起こす可能性が高いといえるでしょう。
腱板損傷の症状
腱板損傷の主な症状は次のとおりです。
- 横になると傷む夜間痛
- 腕を挙げる際に肩が傷む
- 腕を後ろにまわすと傷む
腱板損傷になると腱板のインナーマッスルが機能しなくなり、関節を安定させられなくなります。また個人差はありますが、痛みを感じない場合もあれば、激しい痛みで夜も眠れず治療を検討せざるを得ない場合もあります。
しかし、これらの症状は腱板損傷によるもののみでなく、ほかの肩の問題や疾患でも見られる場合があるため、医師の適切な診断を受けることが大切です。
完全断裂と部分断裂の違い
腱板損傷は、完全断裂と部分断裂の2つに分けられます。
完全断裂は腱が完全に切れて、腱板の機能が失われている状態です。完全断裂の場合、腱板を上から見た際に関節が見えるほど深く切れているため、腱板自体の大部分の機能が喪失します。
一方、部分断裂は腱が一部のみ損傷しており、完全には切れていない状態です。部分断裂には、関節面に近い関節面断裂、腱板の表層を覆う滑液包に近い滑液包面断裂、腱板の腱内部で起こる腱内断裂などいくつかのパターンがあります。
一部の腱が損傷しているのみのため、完全に機能が失われた状態ではありません。
腱板損傷と似ている病気
腱板損傷と似ている病気には、腱板断裂と五十肩が挙げられます。どちらも肩に痛みがあり症状が似ているため、自身で病名を判断するのは難しいでしょう。
正確な病名が知りたい方は、医師の診察が必要です。ここでは、腱板損傷と似ている2つの病気を解説します。自身の症状が当てはまるか、ぜひチェックしてみてください。
腱板断裂
腱板断裂は、肩の腱板の一部または完全に切断された症状のことを指します。腱板損傷と腱板断裂は基本的に同じ意味です。そのため腱板損傷は、腱板の痛みや機能障害を包括的に表現する用語と考えればよいでしょう。
腱板断裂も症状の程度によって部分断裂と完全断裂の2つに分けられます。
腱板断裂の治療方法には、保存療法(安静、物理療法、痛みの管理)、腱板の修復手術をおこなう手術療法、再生医療の3つがあります。どのような治療が適しているかは症状の程度により異なるため、医師と相談して決めるとよいでしょう。
五十肩
五十肩とは、肩の関節周囲の炎症や組織の変化により引き起こされる疾患です。肩関節周囲炎とも呼ばれます。五十肩は主に中高年の方に多くみられる症状ですが、原因は年齢によるもののみではなく、複数の要因が関与して症状が出ます。
具体的な原因はまだ完全に解明されていないものの、要因と考えられているものは姿勢や運動の習慣、加齢、慢性的な肩の炎症などです。五十肩の治療法は、症状の程度により異なります。治療法としては保存療法や手術療法が一般的です。
腱板損傷の治療方法
腱板損傷の治療法には、大きく分けて保存療法と手術療法、再生医療の3つがあります。基本的に腱板損傷は、一度症状が出ると自然治癒しないため、痛みがつらい場合は早めに治療しましょう。
ここでは、腱板損傷の治療法をまとめました。腱板損傷の治療を検討中の方は、ぜひチェックしてみてください。
保存療法
保存療法は薬やリハビリにより、症状を緩和させる治療法です。腱板損傷は薬での治療はできませんが、重度ではない症状の場合には保存療法が推奨されています。
具体的には、痛み止めや炎症を抑える消炎鎮痛剤、外用剤として湿布や塗り薬などが処方されます。また、ステロイド剤の注射による保存療法も高い効果が期待できる治療法です。ほかにも、痛みや損傷の悪化を防ぐために継続的なリハビリを推奨しています。
保存療法は「腱板損傷による夜間痛で眠れない」「腕を上げると痛みがあるが重度ではない」など、比較的症状が軽い方におすすめです。
手術療法
腱板損傷を治して痛みから解放されたいのなら、保存療法で一時的に症状を緩和させるよりも手術療法の方がおすすめです。
腱板損傷の手術には、太ももの人工素材を腱板の代わりとして移植する処置や、特殊な人工関節を挿入する方法などがあります。いずれの方法も体を傷つけることになるため、副作用や失敗のリスクはあります。
しかし、腱板損傷は自然治癒が期待できない疾患です。将来的に肩の痛みが悪化した場合の選択肢として覚えておきましょう。
再生医療
再生医療は自身の細胞を採取し、幹細胞を取り出して培養する治療法です。手術では不可能な腱板の再生ができます。また注射のみで治療できるため、メスを使う手術と比べてリスクを軽減できる点もメリットです。
治療期間は数か月かかるものの、入院は必要ないことから普段通りの生活を送れます。
ただし、再生医療は1回で効果が出る方と、2~3回の投与で効果がでる方がいます。そのため、再生医療の治療期間には個人差があることを認識しておきましょう。
腱板損傷で手術をしない方のリハビリ方法
腱板損傷の手術をしない場合は、投薬とリハビリで症状の緩和をおこないます。
ここでは、腱板損傷の手術をしない場合のリハビリ方法をまとめました。メスを使わず、自身で症状の改善を図りたい方は、ぜひチェックしてみてください。
手術をしない方のリハビリ期間は3~4か月
手術をしない場合は、3~4か月程度の期間を目安にリハビリをおこないます。基本的にリハビリは毎日する必要があります。
ただし、過度に肩に負担をかけると痛みが悪化する可能性もあるため、軽い動作を無理のない範囲でおこなうことがポイントです。
筋力トレーニング
腱板損傷による肩の不具合を緩和するためには、関節を動かす筋肉を鍛えることが大切です。損傷している腱板に対するトレーニングではなく、肩回りの筋肉を鍛えることで腱板への負担を軽減できます。
具体的には500ミリリットルのペットボトルを持ち、腕を90度まで持ち上げて小さな円を描くように動かします。
トレーニング時のポイントは、低負荷でおこなうことです。重すぎると肩に強い負荷がかかるため、500ミリリットル程度のペットボトルが適しています。呼吸を止めずにゆっくりした動作でおこないます。トレーニングの回数は、10回程度からはじめてみましょう。
甲骨や関節を動かす
甲骨や関節を動かすリハビリは、肩回りの筋や靭帯、関節包などの軟部組織をほぐすのに効果的です。
軟部組織が固いままだと、肩を動かす際に腱板に負担がかかります。甲骨や関節を動かすリハビリをおこなうことで、肩関節の可動域が改善する効果が期待できます。
- ゆっくり肩をすくめる(肩を上げるイメージ)
- 肩甲骨を寄せる(胸を張るイメージ)
- 肩甲骨を丸める(背中を丸めるイメージ)
呼吸を止めないように注意しながらおこないましょう。肩に痛みを感じるようなら、動かすのを止めても問題ありません。体の状態に合わせて、できる範囲で毎日数回ずつ続けましょう。
正しい姿勢の確保
背筋を伸ばした正しい姿勢を確保するのも、腱板損傷の症状緩和に有効です。
また横になると肩の痛みが強くなる夜間痛がある方は、腕の下にクッションを入れたり、痛みが少ない方の肩を下にして横向きに寝てみたりなど、少しでも症状が和らぐ姿勢を探しましょう。
大切なことは腱板に過度な負荷をかけないことです。正しい姿勢やリハビリを続けながら、症状緩和のために少しずつ行動をとりましょう。
腱板損傷で手術をする方のリハビリ方法
腱板損傷の手術には、太ももの人工素材を腱板の代わりに移植する方法や、特殊な人工関節を挿入する方法などがあります。体に負担はかかるものの、腱板損傷の症状を緩和するのではなく、根本的に解決したい方には有効な方法です。
ただし、術後のリハビリを継続しておこなう必要があります。ここでは、腱板損傷で手術をしたあとのリハビリ方法をまとめました。
手術後のリハビリ期間は約3か月
腱板損傷の手術後のリハビリには約3か月の期間が必要です。肩の腱板は繊細な組織のため、修復部分の回復速度は速くありません。術後は痛みもあることから、思うほどリハビリが進まず不安になる場合もあります。
しかし、根気よくリハビリをすれば徐々に肩が回復してくるため、継続することが大切です。
術後は装具で固定
腱板損傷の術後は、装具で固定する必要があります。装具とはウルトラスリングと呼ばれるもので、約6週間は装着した状態で過ごします。
装具で固定する理由は、術後の不安定な腱板が再断裂するリスクを軽減するためです。装具をつけている間は不自由に感じますが、再手術のリスクを下がるためにも医師の指示を守りましょう。
徐々に自身の力で動かす
腱板損傷の手術後の回復速度は、人によって異なります。そのため、術後のリハビリは体の状態や痛みなどと相談しながら、徐々に自身の力でおこなうことが大切です。
リハビリ室での指導を受ける以外でも、無理のない範囲で自主的にリハビリをおこないましょう。自主的にリハビリを継続すれば、より一層早く肩の機能を改善させられます。
腱板のトレーニング
腱板のトレーニングは、肩関節を安定させるほか、スムーズに動かせるようになるなどの効果が期待できます。
腱板のトレーニングをおこなう際は、ゴムチューブを用意しましょう。ゴムチューブの片方を腰の位置で誰かに持ってもらう、もしくは手すりに結びつけます。
続いて肘を直角にしてゴムチューブを持ち、内側、外側と交互に動かしましょう。1秒で動かし、1秒で戻すイメージです。各10~20回を3セットおこないます。
肩甲骨のトレーニング
肩甲骨のトレーニングは、肩甲骨周りの筋肉を柔らかくするほか、動きをスムーズにする効果が期待できます。ゆっくり肩をすくめて肩甲骨を寄せ(胸を張るイメージ)、肩甲骨を丸める(背中を丸めるイメージ)トレーニングもおすすめです。
また両手を壁にあて、肩甲骨を固定してゆっくり肘を曲げる壁押しのトレーニングもシンプルで継続しやすいためおすすめです。各20回3セットを目標に継続しておこないましょう。
肩の可動域練習
肩の可動域をよくするリハビリは、肩甲骨周りの血液循環がよくなり、肩関節の痛みを改善する効果が期待できます。基本的には補助者がいた方がよいものの、一人で横たわりながらおこなう肩の可動域練習もあります。
- 横向きに寝て、下になっているほうの腕を直角にたてる
- 直角に立てた腕の手首をもう片方の手で持ち、ゆっくり床に向けて倒していく
- 伸びる感じがする場所で20秒間キープする
20秒を3回セットでおこないます。継続すれば、可動域の拡大と肩回りの柔軟性向上が期待できるでしょう。
腱板損傷の禁止動作
腱板損傷と診断された場合は、基本的に肩回りや腕に負担をかけないことが大切です。肩や腕に負担をかけすぎると、腱板損傷が悪化して痛みが強くなります。
そのため、ここでは腱板損傷の禁止動作をまとめました。禁止動作をチェックし、日常生活でも注意しながら過ごしましょう。
重い物を持ち上げる
重いものを持ち上げると肩に負荷がかかるため、腱板損傷が悪化する可能性があります。肩を使うスポーツや、バーベルを持ち上げるウェイトトレーニングなどもおすすめできません。
腱板の損傷がひどくなり、痛みも強くなることから、重いものを持ち上げるのは避けるようにしましょう。
首の後ろで腕を動かす
首の後ろで腕を動かすと、腱板に過度な負荷がかかります。腱板損傷をさらに悪化させる原因となるため、首の後ろで腕を動かすのは避けしましょう。
日常生活では、洗髪やヘアセットなどをおこなう際に注意が必要です。家族や友人などに頼む方がよいですが、難しい場合は無理のない範囲でおこないましょう。
腕に負荷がかかる運動
腕に負荷がかかる運動は肩にも負担になるため、避けることをおすすめします。腕立て伏せや上半身の力のみで物を持ち上げるトレーニングなどは、とくに注意しましょう。
腱板損傷の方は、すでに肩が故障している状態です。症状を悪化させないためにも、腕や肩回りに負荷がかかる運動は避けることが大切です。
腱板損傷のリハビリについてよくある質問
腱板損傷の本格的な治療を検討中ならば、リハビリの期間や入院日数などが気になる方もいるでしょう。
ここでは腱板損傷のリハビリについてよくある質問をまとめました。治療法で迷っている方や、仕事への影響が気になる方は、ぜひ参考にしてみてください。
腱板損傷はリハビリで治る?
損傷の範囲が狭ければ、リハビリで腱板損傷の症状を緩和することも可能です。
ただし、リハビリで腱板損傷そのものを治すことはできません。とくに完全断裂や広範囲の損傷の場合は、時間の経過とともに悪化する可能性もあるため、医師の診察を受けて適切な治療をおこなう必要があります。
腱板損傷のリハビリはいつから実施する?
腱板損傷のリハビリは、手術翌日から開始する場合が大半です。退院後は術後3~4か月程度、リハビリに通います。手術前の症状の度合いによるものの、週2~3回のリハビリを4か月程度は続けることになるでしょう。
腱板損傷のリハビリのための入院期間は?
腱板損傷のリハビリ入院は、2~4週間程度の期間が目安です。手術のみであれば、日帰りが可能なクリニックもあります。
手術をした場合は、退院後に週2~3回程度の頻度でリハビリに通うことになるでしょう。
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まとめ
腱板損傷の治療法には、保存療法と手術療法、再生医療の3つあります。なかでも保存療法の投薬とリハビリは、手術せずに症状を緩和できる方法です。
ただし、腱板損傷は悪化する可能性もあることから、リハビリをする際は肩や腕に強い負荷をかけないように注意しましょう。本記事でも簡単にできるリハビリ方法を紹介しているため、肩の様子を見ながら毎日少しずつ実践してみてください。
腱板損傷が悪化すると、手術療法もしくは再生医療が必要になります。なるべく費用や治療期間をカットしたい方は、リハビリで症状の緩和を図りましょう。